2023年10月4日水曜日

小論文「あるある」⑧

小論文は、それまでのボランティア活動や短期留学など、個人的な経験に基づいて書くものだと思っている。または、小論文を書くためにはそのような経験が必要だと考えている。


「小論文を書けるようになるために、まずはボランティア活動に参加してネタを作らないと」とか、「うちの子は語学留学してるから、小論文を書くのに必要なネタは十分あるんです」とか言う方、けっこういるんですよ。

でも、小論文ってそんな経験で書くものじゃないからね、本来は。


もちろん、論文を書いていく中で必然性があれば、自分の経験や体験に基づくエピソードや具体例を挙げてもいい。

しかし、そのような具体例やエピソードだけでは論文にはならないし、小論文においてそれらが特に必要であるわけではない。


そもそも小論文とは自分の意見なり主張なりを論理によって説明すべきものであって、個人的なエピソードを語るものではないんですよ。

だってそうでしょう、考えてもみてください。

誰かがあなたと異なる意見を主張したとする。

で、その相手が、自分自身の個人的な経験や体験を語って、だから自分の意見は正しいんだ、あなたの意見は間違っているんだと主張したらどうですか?

あなたは納得しますか?

納得しないよね。

「それはあなた自身の個人的な経験であって、万人に共通のものではないし、そもそも私はそんな経験していないから、あなたの言うことがわからない。」となるんじゃないでしょうか。


あるいは、あなた自身の主張の正しさを証明するために、あなたはあなた自身の個人的なエピソードを語るかもしれない。

でも、小論文ってお互いの個人的な経験や体験を語り合うものではないんですよ。

あくまで論理に基づいて議論するのが小論文。

だから、いくら個人的なエピソードを語ってもそれだけでは主張の論拠とはなりえないし、同じ体験を共有していない人を説得することはできないんですよ。


もちろん、ボランティアや留学といった、自分の中では大きな経験といえるものを小論文の中で書いてもいいんですよ。

でも、そこで見聞きしたことだけをもって、何らかの意見の正しさを主張することはできない。

あなたの論文を読む人はあなたと同じ体験を共有していない以上、あなたの主張に納得するとは限らないからです。


逆にいえば、自分の主張の正当性をきちんと論理的に説明できるのであれば、個人的なエピソードや具体例など一切書く必要はないんですよ、小論文では。

だから、小論文を書くためにボランティアや留学、その他なんらかの特別なプログラムに参加する必要は全くないし、そういったものに参加したからと言って優れた小論文が書けるようになるということは全くない。

一部の塾ではそういったプログラムを、これでもかというぐらいに次から次に提供して、生徒や保護者をしつこく勧誘していますよね。

でも、あれは単なるビジネスだからね。

その塾の売り上げや利益のためにやっているんであって、生徒が論文を書けるようになるためではないですからね。

むしろ、そんなことをする時間と労力、お金があるんだったら、一冊でも二冊でもいいから、まともな内容の本を読んで、自分自身の知識を広げ思索を深めること。

そして、それを文章にまとめてみること。

こういった訓練をすることのほうがよっぽど小論文を書くうえでは役立ちますよ。