2018年7月9日月曜日

大学受験英語読解講義②

大学受験英語の読み方2


例題1

Democracy is unthinkable without the ability of citizens to participate freely in the governing process. Through their activity citizens in a democracy seek to control who will hold public office and to influence what the government does. Political participation provides the mechanism by which citizens can communicate information about their interests, goals, and needs, and create pressure to respond.
(東大、2006)


前回は例題の第一文について説明しましたので、今回は第二文から。

Through their activity citizens in a democracy seek to control who will hold public office and to influence what the government does.

ちょっと難しい構造の文ですけど、わたしならこんな風に切りますね。

Through their activity citizens in a democracy seek to control who will hold public office and to influence what the government does.

わかりやすいように短めに切りましたけど、ある程度英語が読める人なら、

Through their activity citizens in a democracy seek to control who will hold public office and to influence what the government does.

ぐらいに長めに切ってもいいと思います。


まず最初のThrough their activity ですが、「彼らの活動を通じて」という意味ですね。

で、なぜここで切るかというと、through は前置詞ですが、前置詞は後に名詞をとって、前置詞+名詞でひとつのまとまりになる。

ここではactivity が名詞ですから、Through their activity で前置詞+名詞のひとつまとまりになるんです。

だからそこで一度切る。


すると次の部分。

citizens in a democracy seek to control

ここまで読むと、seek to control がVですね。

ですから、その前のcitizens in a democracy がそれに対するSになるんです。

したがって、citizens in a democracy seek to control でS+V、「民主主義における市民はコントロールしようとする」と、とりあえずは訳しておきましょう。


そうすると、ここまでのところは、

Through their activity citizens in a democracy seek to control

訳:彼らの活動を通じて、民主主義における市民はコントロールしようとする

とりあえずはこんなところですね。


代名詞が何を指しているのか、意識して読む

で、彼ら、their って誰のことを言っているのか?

まあ、普通に考えるとここでは市民、citizens のことですよね。

でも、普段私が塾で授業をしていると、こういうところでつまずく人がけっこう多いんですよ。

英文を読みこなすコツってたくさんあるんですけど、その中でも、代名詞が指しているものを正確に読み取ることはとても重要なんです。

これができないと、英文を読んでも内容が頭に入ってこない、何を言ってるのかわからない、ということになる。

で、普通は代名詞は、それよりも前に出てきた名詞を受けることが多いんですね。

例えば、

Tom has been in Japan for three years. He speaks Japanese very well.

これなんかめちゃくちゃわかりやすいよね。

二分目のHe は当然、前の分で出てきたTom のことですね。

こういうのが普通。

しかし、先ほどの例文、

Through their activity citizens in a democracy seek to control

のように、代名詞が指しているものが、それよりも後ろに書いている場合がある。

ここではtheir という代名詞が指しているのは、それより後に出てくるcitizens なんです。

こういう場合もよくあるので、代名詞が出てきた場合にはそれが何を指しているのか、意味を考えながら読んでいかなくてはいけない。

まあ、慣れてくれば考えなくてもわかるんですけどね。

とにかくたくさん英文を読んで、英文に慣れるということが重要。


疑問詞節

で、次に行きますが、

who will hold public office

これは疑問詞who から始まる疑問詞節です。

who + V で「誰がVするか(ということ)」というふうに訳します。

ですから、ここでは「誰が公職に就くか(ということ)」ぐらいでいいでしょう。


この疑問詞節ですが、名詞節といわれているものの一種で、名詞と同じようにSOCとして使える。

ここではwho will hold public office というまとまり全体が直前の動詞control の目的語、Oなんですね。

だから、control who will hold public office

で、「誰が公職に就くか(ということ)をコントロールする」となります。


疑問詞節は他にもたくさんありますから、主なものとその訳し方をまとめておきますね。

What + V :何がVするか(ということ)

What + S + V:何をSがVするか(ということ)

Who + V:誰がVするか(ということ)

Who + S + V:誰をSがVするか(ということ)

When + S + V:いつSがVするか(ということ)

Where + S + V:どこで(に、へ)SがVするか(ということ)

Which + V:どちらが(どれが)Vするか(ということ)

Which + S + V:どちらを(どれを)SがVするか(ということ)

How + S+ V:どのようにSがVするか(ということ)


Why + S + V:なぜSがVするか(ということ)

Whose名詞 + S + V:誰の~をSがVするか(ということ)

What time + S + V : 何時にSがVするか(ということ)

Whether + S + V (or not): SがVするかどうか(ということ)


例えば、I don’t know why he was absent for school yesterday.

訳:彼が昨日なぜ学校を欠席したのか、私はわからない。

why he was absent for school yesterday が全体でひとつのまとまりとして、動詞know に対する目的語(O)となっています。


Whether he will come or not is uncertain.

訳:彼が来るかどうかはわからない。

この文ではやはり、Whether he will come or not が全体でひとつのまとまりとして、後ろのbe動詞 is に対する主語(S)となっています。


他にもまだまだありますが、だいたいどんなふうに訳すのか、疑問詞節の意味がわかったと思います。


もとの例文に戻って、

Through their activity citizens in a democracy seek to control who will hold public office

訳:民主主義において市民は、彼らの活動を通じ、誰が公職に就くのかをコントロールしようとする

と、こうなりますね。

で、続き、and to influence の部分です。


等位接続詞 and

and は接続詞、より詳しく言うと等位接続詞というものなんですね。

別にこんな言葉は覚えなくてもいいんですけど、要するに何かと何かを対等なものとしてつなぐということなんです。

どういうことか?

A and B という形が出てきたら、意味はもちろん「AとB」でいいのですが、AとBが互いに対等なものであるということなんです。

逆に言うと、AとBを対等なものとしてつなぐ場合にA and B という形になるんですね。


こんな説明してもわかりにくいと思いますので、例文に則して説明しますね。

and to influence

and の後ろに to influence という不定詞(to + 原型)が来ていることに注意してほしいんですよ。

先ほど言ったように、A and B ABを対等なものとしてつなぐわけですから、and の後ろにto+ 原型が来ているということは、その前のto + 原型とつないでいるということなんです。

で、and の前にto + 原型があるかというと、ありますよね。

seek to control の部分、to control がある。

ということでこのto influence は前のto control と対等なものとしてつながれているわけです。

ということは、seek to control seek to influence なんですね。

で、これをand でつないでseek to control and to influence となるわけです。


少し前のところで、「名詞や動詞は前置詞とセットで覚える」と言いましたけど、ここでもseek という動詞は「seek to 原型」という形で、「~しようとする、~しようと努力する」と覚えておけばよいでしょう。

seek という動詞単独で覚えててもダメなんですね。


で、なにをしようとするのか。

seek to influence で「影響を与えようとする」です。

では、何に、あるいは誰に影響を与えようとするのか?

はい、この後ろに書いてある、

what the government does.

この部分がinfluence の目的語。

ここは What + S + V の形なので、先に4で述べた疑問詞節かなと思われる方も多いかもしれません。

だから、「政府が何をするか」と訳したくなりますよね。

でも実はこれ、そうじゃないんです。

まあ、そのように解釈してもいいんですけど、ここでは関係詞節ととるほうが自然。


関係詞のwhat 節

形は先ほどの疑問詞節と同じですが意味が少し違う。

What + V:Vするもの・こと
What + S + V:SがVするもの・こと

例えば I didn’t understand what I saw in the wood.

これを関係詞節として訳すと、
「私は森の中で見たものを理解することができなかった。」となる。

一方、疑問詞節として訳すと、「私は森の中で何を見たのか、理解できなかった。」


まあ、どちらでもそんなに大差ないように思えるけど、どちらかというと前者のほうが自然でしょう。

これが関係詞節のwhat節と疑問詞節のwhat節の違いです。


例文に戻って、what the government does を関係詞節として訳すと、「政府がすること・やること」、疑問詞節だと「政府が何をするか」となりますね。

で、influence what the government does. だと、「政府がすることに影響を与える」か「政府が何をするかに影響を与える」か?

どちらが自然かというと、やはり前者でしょうね。

だからここは関係詞のwhat節ととっておきましょう。


ここで重要なことは、このいずれが正解かということではなく、両方あるということを覚えておいてほしいんですよ。

関係詞のwhat節と疑問詞のwhat節。

で、それぞれ文脈に応じて、どちらも訳せるようにしておくこと。

特に関係詞のwhat節のほうが英文に出てくる頻度が高いように思います。


これで第二文が全て訳せますね。

Through their activity citizens in a democracy seek to control who will hold public office and to influence what the government does.

訳:民主主義における市民は、彼らの活動を通じて、誰が公職に就くのかをコントロールしようとし、また、政府のすることに影響を及ぼそうとする。


もう少しなめらかな訳だと、

訳:民主主義社会において人々は、自らの政治的活動によって、誰が選挙に通るのかをコントロールしようとする。と同時に、政府のすることにも影響力を行使しようとする。

となります。

(次回に続く)




大学受験英語読解講義①

大学受験英語の読み方1


例題1

Democracy is unthinkable without the ability of citizens to participate freely in the governing process. Through their activity citizens in a democracy seek to control who will hold public office and to influence what the government does. Political participation provides the mechanism by which citizens can communicate information about their interests, goals, and needs, and create pressure to respond.
(東大、2006)


適当な「まとまり」ごとに切りながら読んでいく

一文一文が長い英文、複雑な英文を前から順に読んでいく場合、とりあえずは適当なまとまりごとに切りながら読んでいくということが重要です。

これができるようになると、テンポよくリズムに乗って読むことができるようになる。

「適当な」まとまりと書きましたが、「適切な」といったほうが正確ですね。

なんでも適当なところで切ればよいというわけではないです、もちろん。


では、どういうところで切っていけばよいのか?

まとまりとは何なのか?


例えば第一文、私なら次のように区切りますね。

Democracy is unthinkable without the ability of citizens to participate freely in the governing process.


まず最初の、Democracy is unthinkable

これSVCなんですよ。

is V であることは皆さんわかりますよね。

そうすると当然、その前のDemocracy S

基本的にはVの前にSが来ますから。

で、is be 動詞ですね。

be動詞の後に来るのはC

2文型ですね。

要するに、Democracy is unthinkable の部分だけでもうこの文の文型が完成している。

「民主主義は考えられない。」

これで、この文の言いたいことのメインの部分は既に述べてしまっているんですね。

だからこれが一つのまとまり。


もうひとつ。ここで切る理由があるんです。

それは、unthinkable の後に、without という前置詞が来ていますね。

前置詞が来ると、そこから一つのまとまりができる。

だから前置詞without の前で切るんですよ。


で、without the ability of citizens

もちろん、前置詞of の前で切ってもいいんですが、あんまり細かくコマ切れにする必要もないので、これでひとまとまりでよいでしょう。

重要なことは読みやすいように切るということですからね。

「市民の能力なしでは」という意味ですね。

前の部分とつなげると、「市民の能力なしでは民主主義は考えられない」という意味になりますね。

まあ、バカばっかりの国では民主主義なんて成り立たないと言いたいのかな、きっとそうだろうなあと思いますよね。


でも、実はそうじゃないんですよ。

次の部分を読むとわかるんですけど。

to participate freely

はい、ここもto という前置詞で始まりますので、この前置詞の前で切りました。

participate で「参加する」という意味ですけど。

で、freelyという副詞が後ろについているから、自由に参加するという意味ですよね。

では、最初のto は何なのか?

to の後に動詞participateの原型が来ていますから不定詞です。

ここではability を修飾する形容詞用法の不定詞なんです。

と書くとたぶん、わからない人がけっこういるかと思うんですよ。

なぜability を修飾するのか、そもそも「不定詞の形容詞用法」ってなんなのか?

簡単に説明すると、「名詞(または代名詞)+ to不定詞」というかたちで、不定詞が後ろから前の名詞を修飾する。

「~するための・・・」とか「~すべき・・・」と、普通は訳します。

で、この場合だと ability to participate で、参加する能力、ないしは参加するための能力、参加できること。


名詞や動詞は前置詞とセットで覚える。

to participate がなぜability とつながるのか。

これは、ability という単語の使い方を知っていればすぐにわかるんですね。

辞書でability を調べると「能力」とか「できること」とか書いてあると思うんです。

で、(to do)とか書いてないですか?

例文を読むと、
I do not doubt his ability to do it.
って、書いてるんですよ、私の辞書には。

たぶん皆さんの辞書にも同じようなことが書いてあるはずです。


で、ability という単語を覚える場合、「ability to 原型」で「~できる」という意味だと覚えなくてはいけない。

単に「ability = 能力」とだけ覚えていても、実際の英文を読んだり書いたりする際には、それだけでは使えないんですね。

逆に、「ability to 原型 ~できること、~する能力」と覚えておけば、
ここで to participate が少し前のability とつながるということがすぐにわかるんですよ。

単語を覚えるときにはこのように覚えてください。

名詞や動詞を調べたら、それらがどのような前置詞とくっついて用いられるのか、セットで覚えておく必要があります。


さらに、辞書は「引く」ものではなく「読む」ものなんですね。

わからない単語を辞書で調べたら、単に意味をいくつか確認して終わりではなく、説明や例文をきちんと読んでください。

そうすれば、その単語がどのように用いられるのかや、その単語の持つニュアンスなどがわかるんですよ。

けっこう面倒な作業なんですけど、これを普段から心がけておけば、すごい語彙力がつきますから。


で、例文に戻ると、the ability to participate で「参加する能力」という意味になる。

the ability of citizens to participate freely だと「自由に参加する市民の能力」ですね。


では、何に参加するのか。

最後の部分、in the governing process.

ここもin という前置詞で始まるので、その前で切りました。

「統治プロセス」ないしは「統治のプロセス」。

まあ、「政治のプロセス」って訳したほうがより自然な日本語になるかな。


で、このin なんですけど、なぜin なのか。

はい、ここもparticipate という動詞の使い方を知っていればすぐにわかる。

participate という単語を辞書で調べると書いてあると思うんですけど、
participate in ~ で「~に参加する」という使い方をよくするんですね。

ここでもそうなんです。

participate in the governing process. で「政治プロセスに参加する」です。


ということでもう一度全文を見ておくと、

Democracy is unthinkable without the ability of citizens to participate freely in the governing process.

訳:市民が自由に統治のプロセスに参加する能力がなければ、民主主義は考えられない。


まあ、これでもいいんですけど、日本語訳としてはちょっと硬い。

もう少し自然な感じの訳にしたいですね。

こんな感じでしょうか。

訳:市民が自由に政治のプロセスに参加できなければ、民主主義は成り立たない。


ability は「能力」でもいいのですが、「~できること」という意味なんです。

だから、「参加する能力」よりも「参加できる」くらいでいいでしょう。


また、unthinkable は文字通り、「考えられない」でもいいのですが、「民主主義が考えられない」とはどういう意味か、考えてみると「民主主義がありえない」とか「民主主義が成り立たない」とか、まあ、実質そういう意味ですね。

(次回に続く)