2019年1月14日月曜日

小論文「あるある」④

前向きな解決策が書けない

(前回の続き)

次に2番。

暗くて悲観的なやつ。


たしかに現在の日本の社会状況を見るとどうしても悲観的にならざるを得ない。

財政破綻懸念、少子高齢化、人口減少、長期にわたる景気低迷、国際的地位の低下、格差の固定化など、まじめに考えれば考えるほど、現実的には解決不能で悲観的にならざるを得ません。

しかしだからといって、「解決不可能だから、どうにもならない」では、小論文を書く意味がありませんし、点数の面でも評価されません。

実際には無理だろうと思いつつも、多少のリアリティが感じられる結論を書かなくてはならない。


例えば少子化と人口減少について。

このトレンドをどう食い止め、方向転換していくのか。

普通に考えると、

1.出生率を上げる

2.移民の受け入れ

3.1と2の両方

の3つの解決策がある。

まあ、整理すると1と2の二つですね。


これをまじめに考えればどちらもおそらく無理でしょう。

1に関して言うと、子供手当や出産奨励金をばらまくとか、保育園や託児所、児童館など子育て環境をいくら整えたところで、出生率が上がるとは到底思えない。

だって、よく考えてみてください。

日本に関していえば戦後すぐとか、貧しい時代のほうが出生率は高かったじゃないですか。

現代でも、インドやバングラデシュ、アフリカ諸国など貧しい国や地域ほど出生率は高いじゃないですか。

そんな時代や国・地域に、子育てに必要な施設や環境が整っていますか?

子どもを産むことで補助金がもらえたりするのでしょうか?

豊かになればなるほど、女性が高学歴化すればするほど、出生率が下がることは世界中、共通にみられる現象ですよね。

だから、1の解決策はどんなに工夫してもおそらくうまくいかない。


では2はどうか。

これも政治的に無理でしょう。

普段、塾で若い人たちと接していて思うのですが、日本人はいまでも外国人に対する拒否反応や排他的な意識が非常に強い。

ネットの書き込みなんか見てると顕著ですが、とにかく外国人を受け入れることに抵抗がある人が多い。

特に若い世代にこういう傾向が強いのではないでしょうか。

これ、いつも不思議に思うことなんですけど、自分たちが海外に出ていくということに関しては積極的だし、外国の文化や情報に関しても興味や好奇心が強い。

その一方で、外国人が移民として、あるいは労働者として日本にやってくる、ある程度長期間にわたって居住するということに対しては、非常に強い拒否反応を示す。

治安が悪くなる、マナーを守らないなどの理由をつけ、何かというとすぐに「日本から出ていけ」だの「日本に来るな」だのといった発言をする。

ネットの書き込みなんか見ると、こういう発言で埋め尽くされているよね。

だからおそらく2の解決策も無理でしょう。


そうすると、近い将来の日本を考えた時、最も可能性が高いのは少子化と人口減少がますます進み、国力が衰退していく、国際的地位も低下していく、というシナリオです。

まじめに考えればそうなります。

しかし!

こんなことを書いてはダメなんですよ、入試の小論文では。

無理だろうと思いながらも、やはり書かなくてはいけないんです。

「働く女性が安心して子育てができる環境を整えることが少子化対策になる」とか、「移民受け入れに対する社会的コンセンサスを醸成していくためにはどのような方策が考えられるか」とか。

こういう前向きな解決策を書いていくのが、大学受験の小論文なんです。


本音と建前といいますが、試験とはやはり公的なものですので、そこでは建前の議論をしなくてはいけない。

本音を語ればいいというものではないのです。