2019年6月11日火曜日

小論文「あるある」⑥

「我々は・・・するように心がけるべきだ」とか「・・・しないように注意すべきだ」など、心がけや考え方を変えることを解決策や結論として提示してしまう。


前回の「小論文あるある⑤」で書いたリアリティのない解決策にはもう一つのパターンがあります。

それは、解決すべき問題に関して、「○○から××へと考え方を変えていく必要がある」とか、「○○するように、一人ひとりが心がける必要がある」といった結論を書いてしまうもの。

これも、何に対してでも、どんな問題に対しても言えるじゃないですか

で、例えば日本国内の問題であれば、我々日本人の大多数が認識を改め、行動を変えることである程度解決するかもしれない。

もし本当にそんなことができるんだったら、わりと解決すると思うんですよ。


でも、問題は「考えを変えなさい、行動を変えなさい」と言われても、そう言われただけではほとんどの人が変わらないということなんです。

だから、こんな結論は言っても無駄だし、なんら解決策にならない。

書いても意味がないんです。


例えば少子化問題について。

このままでは人口が減少して国力が衰退するから、我々は明日から心を入れ替えて子作りに励むべきだ、独身者は一刻も早く結婚相手を見つけ、できれば3人、4人と子どもを産み育てるべきだ。

こう言われて「はいわかりました」と、「明日から婚活や妊活頑張ります」となるでしょうか?

多くの人がそのように意識や行動を変えればもちろん効果はありますよ。

しかし実際には、そうするように言われたからといって、ほとんどの人は考えや行動を変えないでしょう。

だからリアリティがないんですよ、「気持ち」や「心がけ」を変えればよいという解決策では。


そうではなくて、多くの人が実際に行動を変えるような仕組み、制度について論じなければならない。

現実に人を動かす、人々の認識や行動を変える力がある仕組みは、やはり金銭的インセンティブや罰則を伴う法律でしょう。


もちろん、流行や影響力のある人々の発言や行動などによって少なからぬ人々に影響を与え、動かすことはできる。

しかし、だからといって意図したとおりに流行を作り出すということは難しいでしょうし、スポーツ選手やタレントなど社会的影響力のある人に国の政策に即した発言をさせるなんていうのも、ちょっとどうかと思いますよね。

やはり金銭的なインセンティブや法律を軸にして、現行のシステムをどう変えていくのか、どんなシステムを新たに作っていくのか、これについて論じていくのが問題解決型小論文の正攻法だと思います。

金銭的インセンティブとしては助成金や減税、法律に関しては既存の法律を改正する、ないしは新たな法律を作るということになります。


例えば先ほどあげた少子化問題を例に挙げると、やはりこの二点から論じられることが多いですよね。

金銭的インセンティブとしては子供手当のようなものや減税ですね。

子ども一人につき月額いくらの補助金を出すとか、3人目以降はいくらにするとか。

あるいは、子どもがいる家庭に対する扶養控除、税額控除などをさらに拡大する。

また、過疎化に悩む地方の自治体などでは、子どもがいる家族が引っ越してくると空き家をただで借りられるとか、格安の土地と住宅が与えられるなどというのもありますよね。

こういった金銭的インセンティブを与えることで、出生率を上げようとする方法が一つあります。


もうひとつは法律。

例えばこの場合でしたら、企業がすべての従業員に対して確実に出産・育児休暇を取らせることを徹底するよう、新たな法律をつくってそれを義務化する、違反した場合には何らかの罰則を与えるなどが考えられます。

あるいは外国人労働者や移民の受け入れを促進するような法改正も有効でしょう。

欧米諸国が日本などの東アジア地域に比べると出生率が高く、少子化問題がそれほど深刻ではない理由は、移民の出生率が高いからです。

もちろん移民の受け入れに伴う問題は様々あるでしょうが、単純に出生率を上げることだけを考えると、かなり有効な政策ではあるでしょう。

そのためには、そのような方向へ導くための法整備が必要です。

このように、社会問題の多くは金銭的インセンティブと法律という二つの軸から論じることで、リアリティのある議論ができるのです。