2023年12月6日水曜日

慶應義塾大学法学部FIT入試・概要と対策

概要(日程は2023年)


A方式・B方式あわせて法律学科80名、政治学科80名

 

一次試験

書類提出:9月1日~5日

    一次合格発表:9月19日

 

二次試験

    A方式:9月23日

        模擬講義・50分→これに関する論述試験・45分

        口頭試問・17分(自己アピール2分を含む)

    B方式:9月24日

        総合考査Ⅰ・45分、総合考査Ⅱ・45分

        面接・10分

    二次合格発表:11月1日

 

法律学科A

出願214人(男73・女141)

一次合格68人(男13・女55)

最終合格45人(男8・女37)

法律学科B

出願142人(男46・女96)

一次合格100人(男27・女73)

最終合格63人(男14・女49)

政治学科A

出願258人(男108・女150)

一次合格68人(男21・女47)

最終合格43人(男13・女30)

政治学科B

出願178人(男60・女118)

一次合格104人(男33・女71)

最終合格62人(男18・女44)

 

対策

 

1.スケジュール

 書類の締め切りが毎年9月の初旬と、他大学に比べて早いため、早めに準備を始める必要があります。8月下旬にはすべての書類を完成させる必要があるため、夏休みになってから準備を始めるようでは到底間に合いません。提出書類も、2000字の志望理由書をはじめ、志願者調書が300字程度×4項目、自己推薦書A4・2ページ、別添資料と、書くもの、作るものがかなり多いです。これらをきちんと完成させるためには、数か月の余裕をもって準備を始める必要があります。できれば春休みまで、遅くともGW頃にはスタートすることをお奨めします。

 二次試験は9月の下旬、論述と面接です。一次の発表が出てから一週間以内に二次試験となりますので、一次の結果を待たずに準備をしておかなくてはなりません。論述・口頭試問の対策は半年~一年ほどかけてやっていくのが理想的です。B方式の面接は主に提出書類の内容について聞かれますので、提出書類の原稿完成後、8月下旬から一か月ほどで準備をすればよいでしょう。

 

2.書類準備

 受験生本人が作成するものとしては、志望理由書(2000字)、志願者調書(300字程度の記述×4項目)、自己推薦書Ⅱ(A4・2ページ、A方式のみ)、別添資料(A4・10枚まで、A方式のみ)が主なものとなります。

 志望理由書は1.慶應義塾大学法学部の志望理由、2.入学後の学習計画(何をどのように学ぶか)、3.将来の夢(自分の夢をどのように実現したいか)の3点です。これを核として、志願者調書や自己推薦書などの内容がすべて一貫性のあるストーリーとしてまとまると、よい書類になると思います。

 別添資料は、自己推薦書Ⅰで記入するこれまでの活動内容に関する証明書や賞状などがあるものはそれを提出しますが、ないものに関しては、どのような活動をして、どのような成果を出したのかなど、わかりやすい資料を自分で作ることもできます。別添資料は10枚までとなっていますが、しっかりと10枚出すのがベストでしょう。自己推薦書Ⅱ、別添資料とも、内容だけでなくデザインや構成も含め、しっかりと気合を入れて作りましょう。ここで手を抜くと合格は難しくなります。

 

3.論述対策

 A方式の模擬講義のテーマは以下の通りです。

    2019年:自由の過去と未来

    2020年:民主主義は後退しているのか

    2021年:「多様性」の過去と未来

    2022年:SNS 上の誹謗中傷と刑法

    2023年:陰謀論と現代政治

 講義(50分)を聴いた後、それに関する設問が与えられ、小論文を書くことになります(45分)。講義のテーマが政治思想・政治哲学、法思想・法哲学に関するもの、最近の世の中の風潮を法学的、政治学的に考察したものとなりますので、普段から法学や政治学に関して一般向けに書かれた書物(新書など)を読んでおくとよいでしょう。また、新聞やテレビのニュース、NHKの特集番組等をみて、政治経済や社会問題、テクノロジー、環境等に関する知識を身につけておくことです。そのうえで、それらに関する自身の意見をまとめる訓練をしておくとよいでしょう。また、講義理解に不安がある方は、YouTubeで様々な大学の模擬授業などがみれますので、それらの中から法学や政治学に関するものを選んで視聴し、自身の意見を文章にまとめる練習をしておけばよいでしょう。

 B方式の論述は2題、それぞれ45分、400字です。総合考査1では図表やグラフが与えられ、そこから読み取れることを400字でまとめるというものが多いですが、年度によってはそれに対する解釈も求められることがあります。図表は特に政治学や法学的なものに限らず、幅広く出題されます。総合考査Ⅱは政治学・法学的テーマの小論文、45分で400字です。法律に関する細かな知識は全く必要ありません。それよりも、法思想や法哲学、政治思想・政治哲学における基本的な言葉や概念を知っておくこと、またそれらについて自身の意見をしっかりと持っておくことが有効かと思います。そのためには前段落でも述べたように、これらのテーマに関する書物をなるべくたくさん読み、論文をなるべくたくさん書くという訓練をしておくことです。

 

4.口頭試問・面接対策

 A方式では最所に2分で自己紹介・自己アピールをした後、与えられたテーマに関する口頭試問が行われます。口頭試問のテーマは法学科と政治学科で異なりますが、例年、法学や政治学に関する問題が出題されます。対策としては、論述対策で書いたことと同様ですが、これに付け加えて、話す練習はしておく必要があります。論文で文章として書くことを、口頭で話す訓練を普段からしておくとよいでしょう。文章を書くのと言葉で話すのとは違いますので、普段から話す練習をしておかなければ、本番でいきなり話すことはできません。まして、試験当日は緊張するでしょうから、上手く話すのはなかなか難しいと思います。

 B方式の面接は、主に提出書類の内容に関して聞かれますので、書類で書いたことと一貫性のある受け答えをしなくてはなりません。ここがずれていると、不信感を持たれますので、書類で書いた内容を、もう一度、より丁寧に話し言葉で説明するという姿勢で臨むとよいでしょう。対策としては、提出書類をもとに想定される質問を書き出し、これに対する答えを準備しておくこと、必ず声に出して話す練習をしておくことです。

 

5.倍率

 A方式は5~6倍程度、B方式は3倍弱と、評定(4.0以上)が必要なB方式のほうが倍率は低いです。なので、高校1,2年生でこれを読んでいる方は、できるだけ学校の成績を上げて、B方式でも受験できるようにしておくとよいでしょう。また、男子に比べて女子の方が圧倒的に倍率が低いので、女子には特におすすめ。逆に言うと、男子には厳しい試験です。これは慶應大学やFIT入試に限らず、推薦入試一般にあてはまることですが、おそらくその理由は社交性やコミュニケーション能力の違いにあると思われます。高校生ぐらいの年齢では、言葉や文章で自分を表現する能力は、一般的には女子の方が男子よりも長けているものと思われます。しかしながら、書類はもちろん面接や論文も、準備や訓練しだいで改善することができますので、特に男子の場合は早くから準備を始めることが合格につながります。

 また、一次試験でかなり数が絞られます。特にA方式の場合は一次で1/3~1/4程度にまで絞られますので、一次の書類が特に重要です。しっかりと時間をかけて準備をする必要があります。書類で少しでも手を抜くと、ほとんど不合格となります。一次をパスしてしまえば、二次の倍率はA、Bともに1.5倍程度ですので、最終合格の可能性はかなり高まります。