2018年10月26日金曜日

小論文の書き方⑦:時間配分

何を書くか、構想は40分。  作業のペース配分を知ろう!

普段、小論文を教えているなかでいつも目につくことなんですが、時間を測って小論文を書いてもらうと、課題文を読んでいきなり文章を書きだす人がほとんどなんです。

「じゃあ、今から1時間でこの論文を書いてみよう」なんて言って問題を手渡すと、最初の5分ぐらいで課題文は読んでしまう。

で、いきなり書き始めるんですよ、原稿用紙や解答用紙に。

そんなに短時間でよくもストーリーが決まるものだなあと感心してみていると、2,3行書いて手が止まる。

しばらくするとまた書き始める。

2,3行書くとまた手が止まる。

しばらくすると、せっかく書いたものを一生懸命消しゴムで消している。

またしばらく考えて、2,3行書いて・・・。

これを一時間弱ずっと繰り返してるんですね。

で、書いたものを読んでみるとたいてい支離滅裂だったり、途中で主張が変わっていたり、テーマが二つあったり・・・。

とにかくおかしな論文になっていることがほとんどなんです。


当たり前ですよね。

よく考えずにとりあえず思いついたことを書いているだけですから、そこに一貫した論理があるわけがない。

最初にストーリーをよく考えずに書くとこうなってしまうんですよ。


きちんとした論理に基づく一貫性のある文章を書くためには、書き始める前にまずストーリーをきちんと完成させる必要がある。

テーマは何か、それに関する意見は何か、賛成なのか反対なのかをまずは決める。

次に、その主張の論拠、なぜそのような主張が正しいと言えるのか、論理的に考え、最後に結論を出す。

結論は主張と矛盾していないか、テーマとずれていないか、よく吟味する。

下書きとしてこれら一連の作業をきちんと完成させてからはじめて、原稿用紙や解答用紙に文章を書き始めるのです。


書きだす前にはもう既に一貫したストーリーが最初から最後まできちんとできていなくてはいけない。

後は文章を書くだけというところまで構想を練ってから、実際に文章を書き始めるのです。

で、もちろん文章を書き始めたら、途中で考えが変わったり、もっといいアイデアを思いついたりしても、絶対に内容を変えないこと。

最初に決めたストーリーで書いていきます。

でないと、前半と後半でテーマや主張が変わってきたり、おかしな文章になってしまうのです。


では、具体的にどのようなペース配分で下書きと清書をすればよいのか。

例えば試験時間が1時間、字数が800字だとすると、最初の30~40分は下書きにあててください。

30~40分かけてストーリーをしっかり考え、結論まで決めてしまえばあとは書くだけです。

800字、原稿用紙2枚程度ですから、文章を書くだけなら20分もあれば十分です。

考えながら書いていると時間がかかりますが、内容が決まっていればすらすら書けるはずです。

試験対策として普段から論文を書く練習をする場合、このような時間配分で制限時間内に書くことを心がけるとよいでしょう。


2018年10月23日火曜日

小論文の書き方⑥:結論

結論でもう一度主張を繰り返す

テーマ、主張、論拠と書いてきたら、最後は結論です。

結論は冒頭で述べた主張を、表現を変えてもう一度繰り返すだけでよいでしょう。

簡潔で短いもので構いません。

むしろここでまた頑張って、長々とした結論を書こうとすると、これまで書いてきたことと齟齬が生じたり、最初の主張と必ずしも合致しないような余計なことまで書いてしまうことになる。

そうすると読み手は、「最初と最後で言ってることが違うじゃん。いったいどちらの意見なんだ?」ということになり、評価は低くならざるを得ない。

だから、なるべく簡潔に書いたほうがいいんですよ、結論は。

で、内容は冒頭の主張と同じでなくてはならない。


こんなこと当たり前なんですけど、主張と結論が異なる論文を書く人がわりといるんですよ。

また今度、時間配分の話のところであらためて書きますけど、最初にストーリーを考えずに、とりあえず思いついたことから書きだす人が多いので、書いているうちにだんだん考えが変わってくるんですね。

で、書きあげたものを読むと、最初と最後で言ってることが違う。

何が言いたいのかよくわからない論文になってしまうんです。



こうならないためにも、最初の主張と同じことを最後にもう一度繰り返しておかなくてはならない。

ただし、全く同じ文を二度書けばよいということではないですよ。

表現は多少変えなくてはならない。

表現は違うけれど、言ってることは同じ。

これが主張と結論の関係。

例えば、最初の主張で「経済発展をある程度抑制することとなっても、地球環境の保護を最優先とすべきだ。」と書いたとする。

その場合、結論は「経済がいくら発展して、物質的豊かさや利便性が増したとしても、環境が汚染されて我々がもはや快適に住めなくなってしまっては元も子もないであろう。」みたいな感じでいいでしょう。

どうですか。

主張と結論が、表現は違うけれども同じ意味になっているでしょう。

このように、冒頭で主張したことを最後にもう一度繰り返しておけば、あなたの言いたいことが読み手にはっきりとわかる。

これで論文が「締まる」のです。


2018年10月22日月曜日

小論文の書き方⑤:論拠

主張には必ず根拠が必要

ここまで、テーマと主張について書いてきましたが、これが決まったら次はいよいよ本論です。

これが小論文において最も重要な部分、ここで大きく評価や点数に差がつきます。

あるテーマに関するあなたの意見を主張したら、なぜその主張が正しいと言えるのか、あなたとは反対の意見や異なる立場の人たちを説得するつもりで、論理的に根拠を挙げながら説明していく必要があります。

繰り返しになりますが、ここで重要なことはあなたの意見の「正しさ」を説明するということと、それを「論理的に」説明するということの二点です。

これが小論文と感想文の最も異なる点。

小論文ではあなたの主観や好き嫌い、感情ではなく、あなたの意見の「正しさ」を主張しなくてはいけないのです。


「正しい」というためには、客観的でなくてはならない。

あなたにとってだけ、あなたの頭の中でだけ正しいとか、あなたと同じ意見の人たちの間でだけ正しいというのでは、客観的とはいえません。

それで満足だということであれは、異なる意見の人々との間で議論が成り立たない。

そうではなく、小論文におけるあなたの意見は客観的に見て正しいものでなくてはならない、異なる立場の人々があなたの意見の正しさを認めなくてはならない。

で、正しさを証明するためにはきちんと根拠を挙げて、それを論理的に説明しなくてはいけない。

その論拠がどれほど説得力があるのか、それがいかに論理的に妥当であると言えるのか、ここが小論文の評価において最も重要な点になります。

小論文の点数の大きな部分はここで決まると考えてください。


まずは主張の論拠である本論を論理的に、わかりやすく書くことを心がけてください。

あなたとは異なる意見を持つ読み手を説得するような気持ちで書いてください。

欲を言えばここで展開する論理にオリジナリティがあれば、さらに高得点をねらえます。

他の人があまり書きそうにない論理、なかなか思いつかないであろう論理を展開して、「なるほど!そういう理屈もあるのか」と読み手を唸らせるような議論を展開できれば高評価につながります。


しかしながら、オリジナリティは両刃の剣というところもあるので注意が必要です。

オリジナルであることを目指すあまり、奇を衒った議論や読み手が理解できない、納得できないような理屈を述べ立てると失敗することが往々にしてあります。

また、読み手が知らないような特殊な言葉遣いや専門用語、特定の分野に関する専門家だけが知っているような知識などを書いても、評価は低いものとなるでしょう。

自分勝手で独りよがりな議論と受け取られてしまうからです。


オリジナリティを追求するよりもまずはわかりやすさ、誰が読んでも論理が明快であることを心がけてください。

それがきちんとできるようになって初めて、あなたの独自性を出していくべきなのです。

2018年10月19日金曜日

小論文の書き方④:主張を明確に

さて、テーマが決まったら次はそれに対するあなたの意見を述べなくてはいけません。

「・・・(というテーマ)について、わたしは×××(あなたの意見)と考える」とか、「・・・についてわたしは賛成である(または反対である)」といったように、テーマに関するあなたの意見をはっきりと、明確に主張することが重要です。

日本人の国民性からすると、このように自分の意見を白黒はっきりと主張するというのはどうも苦手な人が多いかもしれません。

「・・・と思うけど、でもそういう考え方も理解できるよね」とか、「・・・はメリットもあるけど、デメリットもあるから、難しいよね。どっちがいいか、はっきりとは言えないよね」とか、普段、こういう感じで話すことが多いですよね、我々は。

「あなたはそういうけど、それは違う。・・・が正しいんだよ」なんて、めったに言わないじゃないですか。

そんなこと言ったら議論どころか口論になりかねない。

だからなんでも曖昧なままにして自分の意見や考えは腹に収めておくというのが、われわれの習慣になっていると思うんですよ。


しかし、小論文はそれではダメなのです。

「・・・については、メリットもあるがデメリットもある。難しい問題だ。」と書くのではなく、「・・・については、メリットもあるがそれを上回るデメリットがあるので、私は反対である」と書くべきです。

あるいは、「・・・について、これから日本人は真剣に議論し、考えていく必要がある」と書くのではなく、「・・・について、現時点で私は×××と考える」と書かなくてはならない。


重要なのは、日本人一般や我々みんなの意見ではなく、あなたの意見、あなたの考えなのです。

これをはっきりと主張しないのであれば、論文を書く意味はないのです。


先ほども述べたように、小論文とはあなたに何かしら主張すべき意見があり、それをみんなに納得してもらいたい、異なる立場の人を説得したい、そのために論理的根拠を挙げて自分の意見の正しさを証明する、このような意図を持って書くべきものなのです。

どうしても主張したい自分の意見なんてない、あるいは意見はあるが、あえてそれを他者に表明したり、誰かを説得したいとまでは思わない。

もしそうであればわざわざ論文なんて書く必要はないよね。

黙ってればいいんですよ、そのほうが楽ですから。

「沈黙は金なり」というように、あえて黙ってるほうが得なことは世の中では多いですよね。

しかし、それでは小論文は書けないのです。

はっきりと、明確にあなた自身の考えを表明しなくてはならない。


普段、塾で生徒さんの書くものを読んでいると、これができていない論文がわりと多いのです。

先ほど書いたように「・・・は難しい問題だ」とか「・・・について、我々は真剣に考えなくてはならない」とか。

これからみんなで議論しましょうみたいなことを書いている。

あなた自身はどう考えるの?

賛成なの反対なの?

聞いても、「うーん...」と唸ってしまう。


どうしても意見が持てない、思いつかないということであれば、とりあえず自分の本音でなくても構わないので、何らかの意見を想定する。

例えばあるテーマに関して、自分自身は賛成とも反対とも言い切れない、難しい問題だと思っているとする。

それでもとりあえず、小論文を書くためにあえて賛成の立場、あるいは反対の立場を取ってみることです。

これは普段から思考実験、練習としてやっておくと、小論文を書くうえで非常に役に立ちます。


例えばあなたが消費税増税について反対だったとする。

当然、反対する理由はいくらでも挙げられるでしょう。

しかし、ここであえて、賛成の立場に立ってみる。

本心とは異なる賛成の立場に立って、果たしてどのような論拠を挙げて反対派を説得するか、考えてみる。

様々なテーマに関して、こういう練習を普段からやっておくことで、一つの課題に対していくつもの異なるストーリーの論文を書けるようになります。