2018年11月16日金曜日

小論文の書き方⑧:言葉づかい

小論文向きの言葉遣いとは

日本語には大まかに二つの言葉、話し言葉と書き言葉があります。

当然のことながら、皆さんが小論文で書くべきは書き言葉です。

このブログでは皆さんが読みやすいように、話し言葉をまじえながら書いていますが、小論文の試験では皆さんはもっと硬い表現を心がけてください。

思いつくままに文章を書いているとどうしても話し言葉になりがちですが、それをそのまま文章として書くのではなく、必ず書き言葉に翻訳するという作業を心がけるとよいでしょう。

迷ったらなるべく硬い表現を選ぶことです。


たとえ内容が同じであっても、口語調のやわららかい文章よりは、少し形式ばった書き言葉で書かれた文章のほうが「なんかレベルの高いこと言ってそう」とか「頭よさそう」とか、そんな印象を与えるんですよ。

ただし、自分でもよく意味のわかっていない言葉や古い表現、今ではあまり使われなくなった言い回しなどは避けてください。


悪い例              よい例
なので     →     したがって、だから、それゆえ、そのため、
みたいな   →     のような、など、
そういう    →    そのような、そういった、それらの、
なんかの   →    などの、のような、
お金持ち   →    富裕層、裕福な人、豊かな人、


「です・ます」調も避けてください。

小論文など公的な文章では、文末は「~です」や「~ます」を使わず、「~だ」「~である」「~と考える」などを用いるのが普通です。

また、男性の場合、一人称として「ぼく」や「僕」を使う人がいますが、これも避けたほうがよいでしょう。

小論文では「私」です。

2018年11月10日土曜日

小論文「あるある」②

自分の意見ではなくみんなの意見を述べている


小論文ではあなた自身の意見を述べることが重要です。

たとえそれが課題文の筆者の意見と同じものであったとしても、あなた自身の意見として、はっきりと主張してください。


何らかの意見を主張する時に、それを自分自身の意見としてではなく、日本人一般とか世間の人々とか、場合によっては人類とか、そういった不特定多数の人々の意見として述べるのはよくない。

例えば、「・・・であると考えるのが普通であろう」とか、「・・・とほとんどの日本人は言うだろう」とか。

こういう書き方はよくない。


意見を主張する際の主語は必ず「私は」「わたしが」です。

「日本人」や「多くの人々」ではありません。


結論に関しても同様です。

「我々みんなが真剣に議論していかなくてはいけない」とか、「これからの日本にとって大きな問題だ」とか、こういうのは良くないんですよ。

これから議論していくとか、考えていくべきではなく、現時点であなた自身がどう考えるのか、それを明確に書かなくてはいけない。


普段、授業で小論文を指導していると、こういったあいまいな主張や結論を書く人がわりと多いんですよ。

理由はいくつか考えられますが、まず第一に我々は普段のコミュニケーションにおいて自分の意見をはっきりと主張するということにあまり慣れていない。

むしろそれをぼかして表現することがマナーや礼儀となっている。

これは外国人からよく指摘されることですが、たしかにこういう面はいまだにとても強くあると思うんですよ、日本語でのコミュニケーションにおいては。


で、二点目として、そのような日本語的コミュニケーションが、新聞やテレビといったマスメディアの表現においても、あるいは政治家の発言などにおいても踏襲されている。

「これからの我々にとって大きな問題ですから、しっかりと議論していく必要がありますね」なんてこと、テレビの司会者やニュースキャスターも政治家も、皆さん言いますよね。

あなた自身はどう考えるの?どう思っているの?って、ついついツッコミたくなりますけど、それははっきりとは言わないことが多いですよね。

で、こういうのを毎日聞いているから、いざ論文を書くとなったときに、ついつい我々も同じような言い回しで結論を書いてしまう。

「難しい問題だ」で終わってしまう。

これではやはり、小論文としては不十分なのです。


小論文を書く際には、普段の日本語的コミュニケーションからはいったん離れて、自分自身の意見を明確に主張しなくてはいけない。

現時点であなた自身はそのテーマについてどう考えているのか、結論ではそれをはっきりと述べなくてはならない。

この点を常に意識して取り組む必要があります。


2018年11月5日月曜日

小論文「あるある」①

気がつくと課題文と同じことを言っている。
自分の意見を述べるべきなのに、課題文の要約になっている。

課題文を踏まえて自分自身の意見を主張すべき論文で、主張も論拠も課題文の筆者と同じ、課題文の要約を書いてしまう方がけっこういます。

もちろん、主張は課題文と同じでもいいのです。

しかしながら、主張が同じであれば論拠は課題文で取り上げられていないものを挙げる必要がある。

課題文の筆者と同じ意見を別の角度から述べる必要があります。

でなければ、それはあなたの論文ではなく、課題文の要約になってしまいますよね。


なぜこのようなことになるのか?


理由はいくつかあると思いますが、まず一番多いのが、課題文で取り上げているようなテーマについて、これまで一度も考えたことがないので、自分自身の主張や論拠を思いつかない。

だから課題文にどうしても引っ張られてしまう。

課題文の主張がすべて正しいと思ってしまい、それを疑ってみるとか、相対化してみるといったことができない。


次によくあるのが、課題文として取り上げられるような本や論文を書く人の意見なんだから、自分の意見や考えよりも優れているに決まっている、これに反論しても無駄だと思ってしまう。

こういう権威に弱い人が意外と多いんですよ、特に若い人は。

もちろん、謙虚であることは必要ですが、論文を書くからには何かしら自分の意見を主張しなくてはいけない。

課題文はいつも正しいとは限らないし、おかしな主張や非論理的な主張をしているものもけっこうあります。

課題文の主張は常に正しいとは思わないことです。


三番目として、課題文に反論すると点数や評価が下がるのではないかと思っている人がけっこういる。

試験の問題としてその文章を出してくるからには、出題者はその課題文の主張を正しいものとみなしているのだろうと、勝手に推測してしまう。

で、それに異を唱えたりすると、出題者の印象は悪くなってしまい、結果として点数や評価が低くなってしまうのではないか。

だから、課題文の筆者の主張には逆らわないほうがいいんじゃないか。

こんな風に考える人が、意外なことにけっこういるんですよ。


でも、そんなことは決してないですから、安心して反論してください。

課題文とは異なる論拠を挙げてください。

小論文の評価は意見や立場によって差がつくということはほとんどありません。

あるテーマについて、賛成と書いたから評価が高くなることもないですし、反対と書いたからと言って点数が低くなるということもありません。

大事なのはそのような意見の論拠がどれだけ論理的かつ明確に、わかりやすく書かれているか、説得力があるか。

ここで評価が決まります。


主張も論拠も課題文と同じでは、オリジナリティが全くありませんから、評価は低いものとなってしまいます。

なので課題文と同じ主張をするのであれば、課題文とは異なる論拠に基づいて議論を展開する必要があります。


 

2018年10月26日金曜日

小論文の書き方⑦:時間配分

何を書くか、構想は40分。  作業のペース配分を知ろう!

普段、小論文を教えているなかでいつも目につくことなんですが、時間を測って小論文を書いてもらうと、課題文を読んでいきなり文章を書きだす人がほとんどなんです。

「じゃあ、今から1時間でこの論文を書いてみよう」なんて言って問題を手渡すと、最初の5分ぐらいで課題文は読んでしまう。

で、いきなり書き始めるんですよ、原稿用紙や解答用紙に。

そんなに短時間でよくもストーリーが決まるものだなあと感心してみていると、2,3行書いて手が止まる。

しばらくするとまた書き始める。

2,3行書くとまた手が止まる。

しばらくすると、せっかく書いたものを一生懸命消しゴムで消している。

またしばらく考えて、2,3行書いて・・・。

これを一時間弱ずっと繰り返してるんですね。

で、書いたものを読んでみるとたいてい支離滅裂だったり、途中で主張が変わっていたり、テーマが二つあったり・・・。

とにかくおかしな論文になっていることがほとんどなんです。


当たり前ですよね。

よく考えずにとりあえず思いついたことを書いているだけですから、そこに一貫した論理があるわけがない。

最初にストーリーをよく考えずに書くとこうなってしまうんですよ。


きちんとした論理に基づく一貫性のある文章を書くためには、書き始める前にまずストーリーをきちんと完成させる必要がある。

テーマは何か、それに関する意見は何か、賛成なのか反対なのかをまずは決める。

次に、その主張の論拠、なぜそのような主張が正しいと言えるのか、論理的に考え、最後に結論を出す。

結論は主張と矛盾していないか、テーマとずれていないか、よく吟味する。

下書きとしてこれら一連の作業をきちんと完成させてからはじめて、原稿用紙や解答用紙に文章を書き始めるのです。


書きだす前にはもう既に一貫したストーリーが最初から最後まできちんとできていなくてはいけない。

後は文章を書くだけというところまで構想を練ってから、実際に文章を書き始めるのです。

で、もちろん文章を書き始めたら、途中で考えが変わったり、もっといいアイデアを思いついたりしても、絶対に内容を変えないこと。

最初に決めたストーリーで書いていきます。

でないと、前半と後半でテーマや主張が変わってきたり、おかしな文章になってしまうのです。


では、具体的にどのようなペース配分で下書きと清書をすればよいのか。

例えば試験時間が1時間、字数が800字だとすると、最初の30~40分は下書きにあててください。

30~40分かけてストーリーをしっかり考え、結論まで決めてしまえばあとは書くだけです。

800字、原稿用紙2枚程度ですから、文章を書くだけなら20分もあれば十分です。

考えながら書いていると時間がかかりますが、内容が決まっていればすらすら書けるはずです。

試験対策として普段から論文を書く練習をする場合、このような時間配分で制限時間内に書くことを心がけるとよいでしょう。


2018年10月23日火曜日

小論文の書き方⑥:結論

結論でもう一度主張を繰り返す

テーマ、主張、論拠と書いてきたら、最後は結論です。

結論は冒頭で述べた主張を、表現を変えてもう一度繰り返すだけでよいでしょう。

簡潔で短いもので構いません。

むしろここでまた頑張って、長々とした結論を書こうとすると、これまで書いてきたことと齟齬が生じたり、最初の主張と必ずしも合致しないような余計なことまで書いてしまうことになる。

そうすると読み手は、「最初と最後で言ってることが違うじゃん。いったいどちらの意見なんだ?」ということになり、評価は低くならざるを得ない。

だから、なるべく簡潔に書いたほうがいいんですよ、結論は。

で、内容は冒頭の主張と同じでなくてはならない。


こんなこと当たり前なんですけど、主張と結論が異なる論文を書く人がわりといるんですよ。

また今度、時間配分の話のところであらためて書きますけど、最初にストーリーを考えずに、とりあえず思いついたことから書きだす人が多いので、書いているうちにだんだん考えが変わってくるんですね。

で、書きあげたものを読むと、最初と最後で言ってることが違う。

何が言いたいのかよくわからない論文になってしまうんです。



こうならないためにも、最初の主張と同じことを最後にもう一度繰り返しておかなくてはならない。

ただし、全く同じ文を二度書けばよいということではないですよ。

表現は多少変えなくてはならない。

表現は違うけれど、言ってることは同じ。

これが主張と結論の関係。

例えば、最初の主張で「経済発展をある程度抑制することとなっても、地球環境の保護を最優先とすべきだ。」と書いたとする。

その場合、結論は「経済がいくら発展して、物質的豊かさや利便性が増したとしても、環境が汚染されて我々がもはや快適に住めなくなってしまっては元も子もないであろう。」みたいな感じでいいでしょう。

どうですか。

主張と結論が、表現は違うけれども同じ意味になっているでしょう。

このように、冒頭で主張したことを最後にもう一度繰り返しておけば、あなたの言いたいことが読み手にはっきりとわかる。

これで論文が「締まる」のです。


2018年10月22日月曜日

小論文の書き方⑤:論拠

主張には必ず根拠が必要

ここまで、テーマと主張について書いてきましたが、これが決まったら次はいよいよ本論です。

これが小論文において最も重要な部分、ここで大きく評価や点数に差がつきます。

あるテーマに関するあなたの意見を主張したら、なぜその主張が正しいと言えるのか、あなたとは反対の意見や異なる立場の人たちを説得するつもりで、論理的に根拠を挙げながら説明していく必要があります。

繰り返しになりますが、ここで重要なことはあなたの意見の「正しさ」を説明するということと、それを「論理的に」説明するということの二点です。

これが小論文と感想文の最も異なる点。

小論文ではあなたの主観や好き嫌い、感情ではなく、あなたの意見の「正しさ」を主張しなくてはいけないのです。


「正しい」というためには、客観的でなくてはならない。

あなたにとってだけ、あなたの頭の中でだけ正しいとか、あなたと同じ意見の人たちの間でだけ正しいというのでは、客観的とはいえません。

それで満足だということであれは、異なる意見の人々との間で議論が成り立たない。

そうではなく、小論文におけるあなたの意見は客観的に見て正しいものでなくてはならない、異なる立場の人々があなたの意見の正しさを認めなくてはならない。

で、正しさを証明するためにはきちんと根拠を挙げて、それを論理的に説明しなくてはいけない。

その論拠がどれほど説得力があるのか、それがいかに論理的に妥当であると言えるのか、ここが小論文の評価において最も重要な点になります。

小論文の点数の大きな部分はここで決まると考えてください。


まずは主張の論拠である本論を論理的に、わかりやすく書くことを心がけてください。

あなたとは異なる意見を持つ読み手を説得するような気持ちで書いてください。

欲を言えばここで展開する論理にオリジナリティがあれば、さらに高得点をねらえます。

他の人があまり書きそうにない論理、なかなか思いつかないであろう論理を展開して、「なるほど!そういう理屈もあるのか」と読み手を唸らせるような議論を展開できれば高評価につながります。


しかしながら、オリジナリティは両刃の剣というところもあるので注意が必要です。

オリジナルであることを目指すあまり、奇を衒った議論や読み手が理解できない、納得できないような理屈を述べ立てると失敗することが往々にしてあります。

また、読み手が知らないような特殊な言葉遣いや専門用語、特定の分野に関する専門家だけが知っているような知識などを書いても、評価は低いものとなるでしょう。

自分勝手で独りよがりな議論と受け取られてしまうからです。


オリジナリティを追求するよりもまずはわかりやすさ、誰が読んでも論理が明快であることを心がけてください。

それがきちんとできるようになって初めて、あなたの独自性を出していくべきなのです。

2018年10月19日金曜日

小論文の書き方④:主張を明確に

さて、テーマが決まったら次はそれに対するあなたの意見を述べなくてはいけません。

「・・・(というテーマ)について、わたしは×××(あなたの意見)と考える」とか、「・・・についてわたしは賛成である(または反対である)」といったように、テーマに関するあなたの意見をはっきりと、明確に主張することが重要です。

日本人の国民性からすると、このように自分の意見を白黒はっきりと主張するというのはどうも苦手な人が多いかもしれません。

「・・・と思うけど、でもそういう考え方も理解できるよね」とか、「・・・はメリットもあるけど、デメリットもあるから、難しいよね。どっちがいいか、はっきりとは言えないよね」とか、普段、こういう感じで話すことが多いですよね、我々は。

「あなたはそういうけど、それは違う。・・・が正しいんだよ」なんて、めったに言わないじゃないですか。

そんなこと言ったら議論どころか口論になりかねない。

だからなんでも曖昧なままにして自分の意見や考えは腹に収めておくというのが、われわれの習慣になっていると思うんですよ。


しかし、小論文はそれではダメなのです。

「・・・については、メリットもあるがデメリットもある。難しい問題だ。」と書くのではなく、「・・・については、メリットもあるがそれを上回るデメリットがあるので、私は反対である」と書くべきです。

あるいは、「・・・について、これから日本人は真剣に議論し、考えていく必要がある」と書くのではなく、「・・・について、現時点で私は×××と考える」と書かなくてはならない。


重要なのは、日本人一般や我々みんなの意見ではなく、あなたの意見、あなたの考えなのです。

これをはっきりと主張しないのであれば、論文を書く意味はないのです。


先ほども述べたように、小論文とはあなたに何かしら主張すべき意見があり、それをみんなに納得してもらいたい、異なる立場の人を説得したい、そのために論理的根拠を挙げて自分の意見の正しさを証明する、このような意図を持って書くべきものなのです。

どうしても主張したい自分の意見なんてない、あるいは意見はあるが、あえてそれを他者に表明したり、誰かを説得したいとまでは思わない。

もしそうであればわざわざ論文なんて書く必要はないよね。

黙ってればいいんですよ、そのほうが楽ですから。

「沈黙は金なり」というように、あえて黙ってるほうが得なことは世の中では多いですよね。

しかし、それでは小論文は書けないのです。

はっきりと、明確にあなた自身の考えを表明しなくてはならない。


普段、塾で生徒さんの書くものを読んでいると、これができていない論文がわりと多いのです。

先ほど書いたように「・・・は難しい問題だ」とか「・・・について、我々は真剣に考えなくてはならない」とか。

これからみんなで議論しましょうみたいなことを書いている。

あなた自身はどう考えるの?

賛成なの反対なの?

聞いても、「うーん...」と唸ってしまう。


どうしても意見が持てない、思いつかないということであれば、とりあえず自分の本音でなくても構わないので、何らかの意見を想定する。

例えばあるテーマに関して、自分自身は賛成とも反対とも言い切れない、難しい問題だと思っているとする。

それでもとりあえず、小論文を書くためにあえて賛成の立場、あるいは反対の立場を取ってみることです。

これは普段から思考実験、練習としてやっておくと、小論文を書くうえで非常に役に立ちます。


例えばあなたが消費税増税について反対だったとする。

当然、反対する理由はいくらでも挙げられるでしょう。

しかし、ここであえて、賛成の立場に立ってみる。

本心とは異なる賛成の立場に立って、果たしてどのような論拠を挙げて反対派を説得するか、考えてみる。

様々なテーマに関して、こういう練習を普段からやっておくことで、一つの課題に対していくつもの異なるストーリーの論文を書けるようになります。

2018年7月14日土曜日

小論文の書き方③:テーマの重要性

前回は小論文とは何か、作文や感想文とはどこが違うのかについて書きました。

今回からは、具体的に小論文をどのように書けばいいのか、順番に説明していきます。

まず最初にやるべきことはテーマを明確にすることです。

あなたがこれから書く論文で、いったい何について書くのか、これをなるべく一つに絞り、論文の冒頭ではっきりと述べる必要があります。

普段、塾で教えているなかで、いろんな生徒さんの書いた論文を読む機会があります。

それらの中には、テーマがはっきりしない論文や、前半と後半でテーマが異なる論文などがけっこうあります

何について書かれた論文なのかはっきりしない、テーマが明確でない論文は、ともすると何を言ってるのかよくわからない論文となってしまいます。


また、一つの論文の中で複数のテーマを設定するのも避けたほうがよいでしょう。

もちろん、字数が4000字(原稿用紙10枚)とか、ボリュームのある論文でしたら、複数のテーマを設定して前半と後半で内容を分けるなどといったことも可能ですが、通常の600字~1000字程度の論文では、やはりテーマは一つに絞るべきです。


では、テーマはどんなものでも構わないのか、自由に選んでもよいのか?

必ずしもそうではありません。

論文の出題形式には様々な形がありますが、よくあるのが「・・・について、あなたの考えを800字程度で述べなさい」というもの。

最初からテーマが指定されているものです。

これのバリエーションとしては、「・・・について、あなたの体験をまじえながら、1200字で論じなさい」とか、「・・・についてあなたは賛成か、反対か。その根拠も明確にして1000字で論じなさい」といったようなもの。

どれもテーマが既に設定されている。

こういった論文では、当然のことながら与えられたテーマについて、正面から論じる必要があります。


なぜこんな当たり前のことをわざわざ書くかというと、これができていない論文を書く人がわりといるからなのです。

例えば、「(与えられたテーマである)・・・について考えるためには、その原因となる×××について論じる必要がある」とか、「・・・について論ぜよとのことであるが、これと関連が深いと思われる×××に関して、私自身興味深い経験をしたことがある」とか。

こんな風に、最初にテーマが与えられているにもかかわらず、それを自分の都合でずらしてしまう。

こういう書き方をする人がけっこういるんですよ。


あるいは、このようにはっきりとテーマをずらすわけではありませんが、最初から最後まで読むと、どうも与えられたテーマについて正面から取り組んでいない。

そのテーマとは関連はあるが別の事柄について論じている。

こういった論文を書く人も多い。

しかしそれではやはり評価は低くなります。

採点者が読めば、テーマがずれているのははっきりわかりますから。


ではなぜ、このように与えられたテーマとは少しずれたテーマについて書くことになるのか。

授業で質問すると、だいたい皆さん、同じことを言うんですよ。

「与えられたテーマの・・・については何を書けばよいのか、よくわからなかった。書けそうになかった。だから、それと関連する×××についてなら書けそうだったので、それにしたんです。」

ほとんどの人がこういうことを言います。

しかし、そこはやはり頑張って、与えられたテーマに正面から向き合い、何かしらの意見をひねり出す必要があります


次によくある出題形式が、課題文を読ませて、それについての意見を書かせるもの。

例えば、「次の文章を読んで、あなたの考えを800字以内で論じなさい」とか、「次の課題文を読み、①筆者の意見を400字以内で要約したうえで、②あなたの意見を800字程度で述べなさい」など。

こういった課題文型の小論文ではどのようなテーマを設定するべきか。

これは当然、その課題文が論じているテーマをあなたの論文のテーマとするのが王道です。

課題文を一読すると、いろんなことが書かれているように思えるかもしれませんが、要するに何について、どうだと言っているのか、その中心となるテーマは何なのか、それに対する課題文の筆者の意見はどのようなものなのかを読みとらなくてはいけません。

それがわかれば、あなたが書くべき論文のテーマも決まってきます。

その課題文のメインのテーマ、これについて書くのがベストでしょう。

どうしてもそれについては書けそうにない、課題文の筆者と全く同じ意見しか出てこない、ということであれば、少しずれたテーマで書くことも許容範囲といえるでしょう。

ただやはり、評価はどうしても低くなってしまうことは否めません。

先ほどと同様、課題文型の問題でもやはり、その中心テーマに正面から取り組むようにすべきです。

小論文の書き方②:小論文とは何か

小論文とは何か

大学受験や大学院受験、就職や採用試験、昇進試験など、小論文を書かなくてはならない機会が長い人生においては何度かあります。

多くの人が小論文というものを書くことを避けては通れないのではないでしょうか。

様々な場面で必要となる小論文というものの書き方について、これまでそんなもの書いたことがないという大学受験生にもわかりやすく、説明していきたいと思います。



 まずはじめに、そもそも小論文とは一体何なのか?

いままでに学校などでよく書かされた感想文や作文、はたまた日記などとは何が違うのか?

受験生の皆さんはこれまで学校の宿題などで様々な文章を書いてきましたよね。

だから皆さん、ただ単に文章を書くということであればそんなに苦手意識もないでしょうし、それなりに書けると思うんですよ。

しかしながら、あらためて小論文といわれると、これまでに書いたことがあるという人はわりと少ないでしょう。

いったい何を書けばよいのか、どのように書けばよいのか、皆目見当がつかないという受験生も多いのではないでしょうか。


小論文とは書き言葉による議論なのです。

何かあるひとつのテーマに対して、自分はどのような意見や主張を持っているのか、その主張なり意見なりがなぜ正しいと言えるのか。

自分とは異なる立場の人に対し、自分の主張の正しさを論理的に、書き言葉によって説明し、説得する。

簡単に言うと、これが小論文なのです。


小論文は作文や感想文とは異なる

作文や感想文では自分が思ったこと、考えたことをそのままわかりやすく、時には面白おかしく書けばいいですよね。

例えば、ある映画を見に行って、それがすごく面白かった。

これまで見たどんな映画よりも素晴らしかった。

だから、その感動を文章でみんなに伝えたい。

これが感想文なんですよ。

その映画がいかに素晴らしいか、よくできているか、ストーリーや映像についての描写、配役や役者の演技など、自分の気に入った点、感動した点をわかりやすく言葉で伝える。

で、あなたの感想文を読んだ人の中には、「そんなに面白いんだったら自分も見てみるか」と思う人もいるでしょう。

しかし一方で、あなたはそんな風に感じたかもしれないけど、たぶんつまらないよね、興味ないなあと思う人も、残念ながらいるはずです。

でも、それはそれで構わないのです。

なにもあなたの感想文を読んだ人たちが皆、あなたの感想に賛同する必要はない

だって、何を面白いと思うか、何を素晴らしいと思うかは人それぞれ、感性や価値観の問題。

全ての人がみな一致するということはあり得ないし、また一致する必要はないわけです。

むしろ、多様な感性、様々な価値観の人が共存することこそが重要です。

だから、感想文はあくまで「あなたの感想」でいいんです。


しかし、小論文はそれではダメなんですよ。

それでは小論文を書く意味がないのです。

どういうことか?

先ほど、小論文とは書き言葉を用いた議論であるといいましたが、みなさん、何かについて議論をするときのこと、考えてみてください。

ある事柄について賛成か反対か、イエスかノーか、みんなで話し合って結論を出すじゃないですか。

例えば会社で何か新しい企画を検討している時に、それをやるのかやらないのか、議論して決めますよね。

あるいは政治家の先生方がある政策をめぐって議論する。

その場合も最後は結局多数決になりますが、その政策をやるかやらないか、結論を出しますよね。

そのような議論をする場合に、みなさん自分の意見を一生懸命主張すると思うのですが、その目的は何でしょうか?

自分とは異なる意見の人たち、反対意見の人たちに対し、自分の意見がいかに正しいのか、合理的であるのかを、論理的にわかりやすけ説明することで、相手を納得させ説得することではないでしょうか。

それを聞いたあなたとは異なる意見を持つ人々が、最終的にはあなたの意見の正しさを認め、それに同意する。

これを目的として皆さん、議論をするわけですよね。


逆に、長時間議論を重ねたけれども、結局お互いに相手の意見に歩み寄ることはできずに合意に達しなかった、議論は平行線のままだったというのでは、何のために議論をしたのか、全くの無駄というわけではありませんが、やはりあまり実りのない議論であったと言わざるを得ません。

ましてや、自分の意見を聞いた相手がそれに同意しようがしまいがどちらでもいい、とにかく自分は言いたいことを言えばそれでいいといった姿勢で議論に臨む人はほとんどいないでしょう。

議論をする目的とはあくまで、互いの主張の論理的正しさを競い合うことで、双方が納得する結論に達する、合意するということであるはずです。


論文に関しても、それが書き言葉による議論である以上、これと同じことが言えるのです。

論文ではやはり、あるテーマに対するあなたの意見を主張し、それがいかに正しいと言えるのか、論理的に説明する必要があります。

あなたの論文を読んだ人が、それによってあなたの意見の正しさを理解し、同意しなくてはいけない。

ここが小論文が感想文などと大きく異なる点なのです。

大学受験英語読解講義③

大学受験英語の読み方3


例題1

Democracy is unthinkable without the ability of citizens to participate freely in the governing process. Through their activity citizens in a democracy seek to control who will hold public office and to influence what the government does. Political participation provides the mechanism by which citizens can communicate information about their interests, goals, and needs, and create pressure to respond.
(東大、2006)


動詞に着目した文型の把握


今回は第三文から。

Political participation provides the mechanism by which citizens can communicate information about their interests, goals, and needs, and create pressure to respond.


最初の部分、Political participation provides the mechanism ですが、前から見ていくと、provides という動詞がありますね。

これがVだから、その前のPolitical participation S、後ろのthe mechanism O。

3文型ですね。

で、いまさらなんですけども、英文を読むときにまず動詞を見つけて、
それをもとにSVOCの構造を把握するということが重要になります。

この場合だと第三文型なんですけども、それはprovides という動詞を見つけることでわかる。

同様に、第一文に戻ると、Democracy is unthinkable の部分はis というbe動詞に着目すればSVCの第二文型ということが分かるんですね。


基本文型は第一文型から第五文型の五つしかないので、一応覚えておいてください。

第一文型:S + V

第二文型:S + V + C

第三文型:S + V + O

第四文型:S + V + O1 + O2

第五文型:S + V + O + C


それぞれの文型の詳細な説明は文法書などを参考にしてほしいのですが、こで重要なことはとにかく動詞Vを見つけるということなんです。

英文の構造を把握するためにはこのSVOCを読み解く、即ちどれがSでどれがVなのか、Vの後ろに来ているのはOなのかCなのか、そのどれでもないのか、といったことが分からなくてはいけない。

で、そのための最初の手がかりが動詞を見つけることなんですね。


動詞が分かれば、普通はその前に来ている部分がS,動詞の後ろがCかO、あるいはそのどちらでもないか。

だからまずは単語の知識が重要です。

動詞を見つけるためには、その単語が動詞であるということを知っている必要がありますよね。

その単語の意味を知らない、あるいは意味は知っていてもそれが動詞であるかどうか、そもそも品詞なんて気にせずに覚えているということではダメなんですよ。


しかも、動詞によってある程度文型が決まってくるんですね。

例えばbe動詞だと、第一文型か第二文型。

それ以外はとらないんですよ、be動詞は。

provide だと第三文型が普通ですが、第二、第四文型もとれる。

しかし、動詞ごとにすべて、どの文型を取れるか、整理して覚えておくなんてことはほぼ不可能です。

なので、それぞれの動詞の使い方をある程度おぼえておけばいいのです。


そのためにはやはり、繰り返しになりますが、辞書を引いたときに例文や使い方をよく読んでおくということが重要です。

provide = 提供・供給する」みたいにおぼえていても全然使えないんです、実際の英文を読む際には。

その単語の品詞は何か、動詞であった場合には後ろに目的語(O)をとる他動詞なのか、補語(C)をとるのか、どんな前置詞を伴って使われるのか。

こういったことも含めておぼえておけば、英文の中でその動詞をみつけることで文型がわかる、英文の構造がわかるんです。


だからまずは動詞を見つけることがとっても重要。

複雑な文、長い文では特にそうです。


で、例文に戻りますが、Political participation provides the mechanism

訳すと「政治参加があるメカニズムを提供する」、とりあえず直訳するとこうなりますね。

あんまり意味がよくわからないですけど。

で、the mechanism ってどんなメカニズムなのか?

それは次に書いてある。


関係代名詞節

by which citizens can communicate information

これは関係代名詞節ですね。

which が関係代名詞であること、関係代名詞節とはそれより前に出てくる名詞(先行詞という)を修飾することは皆さん知っていると思います。


関係代名詞節は一つのまとまりになるので、関係代名詞が出てきたらその前で切る。

この場合は関係代名詞whichの前にby という前置詞がついていますが、前置詞+関係代名詞というのもよく出てくるパターンなので、by which から関係代名詞節が始まるんです。

で、先行詞、すなわちby which 以下の関係代名詞節が修飾しているものは、当然、直前にあるthe mechanism です。

mechanism the がついてますから、どんなメカニズムでもいいわけではなくって、何らかの特定のメカニズムですよね。


じゃあどういうメカニズムなんだと、そこまで読んだ人はみんな、思うわけじゃないですか。

それがby which いかに説明されているわけですよ。

で、そのメカニズムというのは、by which citizens can communicate information
「それによって市民が情報を伝達できる」メカニズムなんだと。


ここで先行詞 the mechanism と関係代名詞節 by which citizens can communicate information との関係を見ておきます。

結論から言うと、
citizens can communicate information by the mechanism なんですね。

「市民はそのメカニズムによって情報を伝達することができる。」

で、the mechanism が前に出てきて、それをby which citizens can communicate information が修飾すると、「市民がそれによって情報伝達できるようなメカニズム」となるわけです。

これが先行詞と関係代名詞節との関係。


by which by by the mechanism byなんです。

the mechanism which citizens can communicate information by と、by をそのままもとの位置に置いておいてもいいのですが、関係代名詞の前に持ってくることがよくあります。

ここでもそう。


で、ここまで見ておくと、

Political participation provides the mechanism by which citizens can communicate information

訳:政治参加はそれによって市民が情報伝達できるような仕組みを与えてくれる。


文脈の中での単語の意味の把握

この辺まで読んでくるとどうも、第一文の participation とか第二文の their activity, この第三文の political participationなど、全て選挙における有権者の投票行動のことを指しているんだなということが分かってくるよね。

最初からそんなことわかっていたよという知性豊かな読者もけっこういるかとも思いますけど、ここまで読んでくるともうそれは明らか。

だから、「政治参加」とか「彼らの活動」とか直訳するより「選挙での投票」とか「投票行動」と訳したほうがいいと思います。


もちろん、political participation で「政治参加」って訳しても間違いではないんですよ。

でもそれが選挙における投票行動を指すとは、政治学とか専門に勉強している人や、実際の政治に何らかの関与をしている人でなければわかりにくいよね。

我々の多くのように、実際の政治にあまり関心がないとか、政治学なんてきちんと勉強したことがないとか、そういう人が大多数だと思うんだけど、そういう「普通の人」が「政治参加」っていう言葉を聞いてどんなことをイメージするか?

どうですか、みなさん?

あなたは「政治参可」してますか?

って聞かれると、「いや、特にはしてないけど」とか答えちゃうよね。


「政治参加」なんて言葉を聞くと、ほとんどの人は「政治家に立候補すること」とか「特定の候補者の支援活動をすること」とか、場合によっては「デモに参加すること」とか、こんな感じのことをイメージすると思うんですよ。

だから、「君、政治参加してる?」なんて聞かれると「いや、別に」となってしまう。


でも、ここで言ってるpolitical participation はそういったことではないんです。

選挙に行って投票すること、あるいは場合によってはあえて選挙に行かないこと、棄権することもpolitical participation なんですよ。

選挙に行って特定の候補者に投票するということは、その候補者の政策を支持するということですね。

特定の政策に対する支持を表明することで微々たるものではあるけれども、政治的影響力を行使する。

あるいは、あえて選挙に行かないということで、投票率を下げるということに貢献する。

これは、「お前らの言ってる政策は右から左まで全部ダメ、反対」っていう意見を表明することになる。

まあ、結果的にですけどね。

例えば投票率が50%を割れたりすると、ある政党や候補者が勝ったとしても、実質的には支持されているとはいえないよね。

半分以上の人たちがその政党なり候補者なりの掲げる政策に魅力を感じていない、支持していないということだからね。


話を戻しますけど、democracy における political participation とは選挙に行って投票することなんですよ。

それがこの第三文あたりまで読むとはっきりわかる。

というか、わからなくてはいけない。


political participation を「政治参加」と訳して、それが具体的に何を指すのかあいまいなまま理解した気になっていると、本当に英文を理解したことにはならないんですね。

だって、特定の政治家に対する政治献金や選挙応援なんかをイメージして読んでいると、だいぶずれた理解になってしまうよね。


英文を読む際には、一つひとつの単語が具体的にどういうことを指しているのか、考えながら読むということが非常に重要なんです。


例えばここで、「政治学の知識なんて全くないし、政治に対する関心もほとんどない」という人が、どうやってpolitical participation を「選挙に行って投票すること」と正確に理解することができるのか。

この後ろの部分を読むと、about their interests, goals, and needs, とあります。

直訳すると、「彼らの利害関心や目標、要求」です。

この部分は直前の information にかかりますから、

the mechanism by which citizens can communicate information about their interests, goals, and needs, 
で、「市民が自分たちの利害関心や目標、要求に関する情報を伝える仕組み」といった意味になります。


我々一般国民は、自分たちの利害関心や目標、要求に関する情報をどうやって政治家に伝えるか?

選挙を通じた投票行動によってですね。

もちろんデモとかネットへの書き込みとか、他にも方法はあると思いますが、一番はやはり投票行動ですよね。

で、これが Political participation なんですから、やはりここでの Political participation は「政治参加」ではなく、「選挙における投票行動」と訳したほうがよい。


このように、文脈に即して単語を訳すということが、非常に重要です。

これは和訳問題に限らず、客観形式の入試問題であっても、自分が英文を読んで正しく理解するためには絶対に必要なことなのです。



第三文、

Political participation provides the mechanism by which citizens can communicate information about their interests, goals, and needs, and create pressure to respond.

訳は、

「選挙を通じた投票行動は、それによって国民が自分たちの利害関心や目標、要求についての情報を政治家達に伝え、また、それにこたえるように政治家達に圧力をかける仕組みである。」

どうですか。

意味がはっきりわかりますよね。

これが文脈を意識して単語の意味を理解した訳なんです。


もしこれを、文脈や話の流れを考慮せずに機械的に直訳するとどうでしょうか。

「政治参加は市民が彼らの利害関心や目標、欲求に関する情報を伝え、答えるための圧力を作り出す仕組みである」

何言ってるのか、よくわからないでしょう。

岩波文庫みたいだよね。


残念ながら、市販の問題集や参考書の解答には、こんなレベルの意味不明な訳が載っていることが多いのです。

多くの塾や予備校の授業でも、この程度の訳でよしとしているんです。

訳している本人もその意味を正確に把握できていないからなんですよ。

しかし、とりあえず英語の構文や文法に関しては間違っているわけではない。


たとえ自分が受験する大学で和訳の問題が出ないとしても、こんな読み方をしている限りは英文の内容がきちんと理解できないんですよ。

だからこそ、英文を正確に理解できるようになるためには、まずは正確な和訳ができるようにならなくてはいけない。


このような作業をせずに、「英語を英語で理解する」なんて言っていると、いくら英文を読んでもその内容がぼんやりとしか理解できないんです。

「英語を英語で正確に理解する」ためには、その前の段階として、まずはきちんと日本語に訳せるようにならなくてはならない。


脱線しましたが、最後に例題1の全訳を書いておきましょう。


例題1

Democracy is unthinkable without the ability of citizens to participate freely in the governing process. Through their activity citizens in a democracy seek to control who will hold public office and to influence what the government does. Political participation provides the mechanism by which citizens can communicate information about their interests, goals, and needs, and create pressure to respond.
(東大、2006)

民主主義は、国民が政治に自由に参加することができなければ成り立たない。

投票行動を通じて、民主主義体制下の国民は、誰が政権の座につくのかをコントロールしようとし、政府がやることに対して影響力を行使しようとする。


選挙を通じた投票行動は、それによって国民が自分たちの利害関心や目的、要求を政治家たちに伝えるための仕組みであり、また、政治家たちにそれらに答えるように圧力をかけるための仕組みである。