2018年7月14日土曜日

小論文の書き方③:テーマの重要性

前回は小論文とは何か、作文や感想文とはどこが違うのかについて書きました。

今回からは、具体的に小論文をどのように書けばいいのか、順番に説明していきます。

まず最初にやるべきことはテーマを明確にすることです。

あなたがこれから書く論文で、いったい何について書くのか、これをなるべく一つに絞り、論文の冒頭ではっきりと述べる必要があります。

普段、塾で教えているなかで、いろんな生徒さんの書いた論文を読む機会があります。

それらの中には、テーマがはっきりしない論文や、前半と後半でテーマが異なる論文などがけっこうあります

何について書かれた論文なのかはっきりしない、テーマが明確でない論文は、ともすると何を言ってるのかよくわからない論文となってしまいます。


また、一つの論文の中で複数のテーマを設定するのも避けたほうがよいでしょう。

もちろん、字数が4000字(原稿用紙10枚)とか、ボリュームのある論文でしたら、複数のテーマを設定して前半と後半で内容を分けるなどといったことも可能ですが、通常の600字~1000字程度の論文では、やはりテーマは一つに絞るべきです。


では、テーマはどんなものでも構わないのか、自由に選んでもよいのか?

必ずしもそうではありません。

論文の出題形式には様々な形がありますが、よくあるのが「・・・について、あなたの考えを800字程度で述べなさい」というもの。

最初からテーマが指定されているものです。

これのバリエーションとしては、「・・・について、あなたの体験をまじえながら、1200字で論じなさい」とか、「・・・についてあなたは賛成か、反対か。その根拠も明確にして1000字で論じなさい」といったようなもの。

どれもテーマが既に設定されている。

こういった論文では、当然のことながら与えられたテーマについて、正面から論じる必要があります。


なぜこんな当たり前のことをわざわざ書くかというと、これができていない論文を書く人がわりといるからなのです。

例えば、「(与えられたテーマである)・・・について考えるためには、その原因となる×××について論じる必要がある」とか、「・・・について論ぜよとのことであるが、これと関連が深いと思われる×××に関して、私自身興味深い経験をしたことがある」とか。

こんな風に、最初にテーマが与えられているにもかかわらず、それを自分の都合でずらしてしまう。

こういう書き方をする人がけっこういるんですよ。


あるいは、このようにはっきりとテーマをずらすわけではありませんが、最初から最後まで読むと、どうも与えられたテーマについて正面から取り組んでいない。

そのテーマとは関連はあるが別の事柄について論じている。

こういった論文を書く人も多い。

しかしそれではやはり評価は低くなります。

採点者が読めば、テーマがずれているのははっきりわかりますから。


ではなぜ、このように与えられたテーマとは少しずれたテーマについて書くことになるのか。

授業で質問すると、だいたい皆さん、同じことを言うんですよ。

「与えられたテーマの・・・については何を書けばよいのか、よくわからなかった。書けそうになかった。だから、それと関連する×××についてなら書けそうだったので、それにしたんです。」

ほとんどの人がこういうことを言います。

しかし、そこはやはり頑張って、与えられたテーマに正面から向き合い、何かしらの意見をひねり出す必要があります


次によくある出題形式が、課題文を読ませて、それについての意見を書かせるもの。

例えば、「次の文章を読んで、あなたの考えを800字以内で論じなさい」とか、「次の課題文を読み、①筆者の意見を400字以内で要約したうえで、②あなたの意見を800字程度で述べなさい」など。

こういった課題文型の小論文ではどのようなテーマを設定するべきか。

これは当然、その課題文が論じているテーマをあなたの論文のテーマとするのが王道です。

課題文を一読すると、いろんなことが書かれているように思えるかもしれませんが、要するに何について、どうだと言っているのか、その中心となるテーマは何なのか、それに対する課題文の筆者の意見はどのようなものなのかを読みとらなくてはいけません。

それがわかれば、あなたが書くべき論文のテーマも決まってきます。

その課題文のメインのテーマ、これについて書くのがベストでしょう。

どうしてもそれについては書けそうにない、課題文の筆者と全く同じ意見しか出てこない、ということであれば、少しずれたテーマで書くことも許容範囲といえるでしょう。

ただやはり、評価はどうしても低くなってしまうことは否めません。

先ほどと同様、課題文型の問題でもやはり、その中心テーマに正面から取り組むようにすべきです。

小論文の書き方②:小論文とは何か

小論文とは何か

大学受験や大学院受験、就職や採用試験、昇進試験など、小論文を書かなくてはならない機会が長い人生においては何度かあります。

多くの人が小論文というものを書くことを避けては通れないのではないでしょうか。

様々な場面で必要となる小論文というものの書き方について、これまでそんなもの書いたことがないという大学受験生にもわかりやすく、説明していきたいと思います。



 まずはじめに、そもそも小論文とは一体何なのか?

いままでに学校などでよく書かされた感想文や作文、はたまた日記などとは何が違うのか?

受験生の皆さんはこれまで学校の宿題などで様々な文章を書いてきましたよね。

だから皆さん、ただ単に文章を書くということであればそんなに苦手意識もないでしょうし、それなりに書けると思うんですよ。

しかしながら、あらためて小論文といわれると、これまでに書いたことがあるという人はわりと少ないでしょう。

いったい何を書けばよいのか、どのように書けばよいのか、皆目見当がつかないという受験生も多いのではないでしょうか。


小論文とは書き言葉による議論なのです。

何かあるひとつのテーマに対して、自分はどのような意見や主張を持っているのか、その主張なり意見なりがなぜ正しいと言えるのか。

自分とは異なる立場の人に対し、自分の主張の正しさを論理的に、書き言葉によって説明し、説得する。

簡単に言うと、これが小論文なのです。


小論文は作文や感想文とは異なる

作文や感想文では自分が思ったこと、考えたことをそのままわかりやすく、時には面白おかしく書けばいいですよね。

例えば、ある映画を見に行って、それがすごく面白かった。

これまで見たどんな映画よりも素晴らしかった。

だから、その感動を文章でみんなに伝えたい。

これが感想文なんですよ。

その映画がいかに素晴らしいか、よくできているか、ストーリーや映像についての描写、配役や役者の演技など、自分の気に入った点、感動した点をわかりやすく言葉で伝える。

で、あなたの感想文を読んだ人の中には、「そんなに面白いんだったら自分も見てみるか」と思う人もいるでしょう。

しかし一方で、あなたはそんな風に感じたかもしれないけど、たぶんつまらないよね、興味ないなあと思う人も、残念ながらいるはずです。

でも、それはそれで構わないのです。

なにもあなたの感想文を読んだ人たちが皆、あなたの感想に賛同する必要はない

だって、何を面白いと思うか、何を素晴らしいと思うかは人それぞれ、感性や価値観の問題。

全ての人がみな一致するということはあり得ないし、また一致する必要はないわけです。

むしろ、多様な感性、様々な価値観の人が共存することこそが重要です。

だから、感想文はあくまで「あなたの感想」でいいんです。


しかし、小論文はそれではダメなんですよ。

それでは小論文を書く意味がないのです。

どういうことか?

先ほど、小論文とは書き言葉を用いた議論であるといいましたが、みなさん、何かについて議論をするときのこと、考えてみてください。

ある事柄について賛成か反対か、イエスかノーか、みんなで話し合って結論を出すじゃないですか。

例えば会社で何か新しい企画を検討している時に、それをやるのかやらないのか、議論して決めますよね。

あるいは政治家の先生方がある政策をめぐって議論する。

その場合も最後は結局多数決になりますが、その政策をやるかやらないか、結論を出しますよね。

そのような議論をする場合に、みなさん自分の意見を一生懸命主張すると思うのですが、その目的は何でしょうか?

自分とは異なる意見の人たち、反対意見の人たちに対し、自分の意見がいかに正しいのか、合理的であるのかを、論理的にわかりやすけ説明することで、相手を納得させ説得することではないでしょうか。

それを聞いたあなたとは異なる意見を持つ人々が、最終的にはあなたの意見の正しさを認め、それに同意する。

これを目的として皆さん、議論をするわけですよね。


逆に、長時間議論を重ねたけれども、結局お互いに相手の意見に歩み寄ることはできずに合意に達しなかった、議論は平行線のままだったというのでは、何のために議論をしたのか、全くの無駄というわけではありませんが、やはりあまり実りのない議論であったと言わざるを得ません。

ましてや、自分の意見を聞いた相手がそれに同意しようがしまいがどちらでもいい、とにかく自分は言いたいことを言えばそれでいいといった姿勢で議論に臨む人はほとんどいないでしょう。

議論をする目的とはあくまで、互いの主張の論理的正しさを競い合うことで、双方が納得する結論に達する、合意するということであるはずです。


論文に関しても、それが書き言葉による議論である以上、これと同じことが言えるのです。

論文ではやはり、あるテーマに対するあなたの意見を主張し、それがいかに正しいと言えるのか、論理的に説明する必要があります。

あなたの論文を読んだ人が、それによってあなたの意見の正しさを理解し、同意しなくてはいけない。

ここが小論文が感想文などと大きく異なる点なのです。

大学受験英語読解講義③

大学受験英語の読み方3


例題1

Democracy is unthinkable without the ability of citizens to participate freely in the governing process. Through their activity citizens in a democracy seek to control who will hold public office and to influence what the government does. Political participation provides the mechanism by which citizens can communicate information about their interests, goals, and needs, and create pressure to respond.
(東大、2006)


動詞に着目した文型の把握


今回は第三文から。

Political participation provides the mechanism by which citizens can communicate information about their interests, goals, and needs, and create pressure to respond.


最初の部分、Political participation provides the mechanism ですが、前から見ていくと、provides という動詞がありますね。

これがVだから、その前のPolitical participation S、後ろのthe mechanism O。

3文型ですね。

で、いまさらなんですけども、英文を読むときにまず動詞を見つけて、
それをもとにSVOCの構造を把握するということが重要になります。

この場合だと第三文型なんですけども、それはprovides という動詞を見つけることでわかる。

同様に、第一文に戻ると、Democracy is unthinkable の部分はis というbe動詞に着目すればSVCの第二文型ということが分かるんですね。


基本文型は第一文型から第五文型の五つしかないので、一応覚えておいてください。

第一文型:S + V

第二文型:S + V + C

第三文型:S + V + O

第四文型:S + V + O1 + O2

第五文型:S + V + O + C


それぞれの文型の詳細な説明は文法書などを参考にしてほしいのですが、こで重要なことはとにかく動詞Vを見つけるということなんです。

英文の構造を把握するためにはこのSVOCを読み解く、即ちどれがSでどれがVなのか、Vの後ろに来ているのはOなのかCなのか、そのどれでもないのか、といったことが分からなくてはいけない。

で、そのための最初の手がかりが動詞を見つけることなんですね。


動詞が分かれば、普通はその前に来ている部分がS,動詞の後ろがCかO、あるいはそのどちらでもないか。

だからまずは単語の知識が重要です。

動詞を見つけるためには、その単語が動詞であるということを知っている必要がありますよね。

その単語の意味を知らない、あるいは意味は知っていてもそれが動詞であるかどうか、そもそも品詞なんて気にせずに覚えているということではダメなんですよ。


しかも、動詞によってある程度文型が決まってくるんですね。

例えばbe動詞だと、第一文型か第二文型。

それ以外はとらないんですよ、be動詞は。

provide だと第三文型が普通ですが、第二、第四文型もとれる。

しかし、動詞ごとにすべて、どの文型を取れるか、整理して覚えておくなんてことはほぼ不可能です。

なので、それぞれの動詞の使い方をある程度おぼえておけばいいのです。


そのためにはやはり、繰り返しになりますが、辞書を引いたときに例文や使い方をよく読んでおくということが重要です。

provide = 提供・供給する」みたいにおぼえていても全然使えないんです、実際の英文を読む際には。

その単語の品詞は何か、動詞であった場合には後ろに目的語(O)をとる他動詞なのか、補語(C)をとるのか、どんな前置詞を伴って使われるのか。

こういったことも含めておぼえておけば、英文の中でその動詞をみつけることで文型がわかる、英文の構造がわかるんです。


だからまずは動詞を見つけることがとっても重要。

複雑な文、長い文では特にそうです。


で、例文に戻りますが、Political participation provides the mechanism

訳すと「政治参加があるメカニズムを提供する」、とりあえず直訳するとこうなりますね。

あんまり意味がよくわからないですけど。

で、the mechanism ってどんなメカニズムなのか?

それは次に書いてある。


関係代名詞節

by which citizens can communicate information

これは関係代名詞節ですね。

which が関係代名詞であること、関係代名詞節とはそれより前に出てくる名詞(先行詞という)を修飾することは皆さん知っていると思います。


関係代名詞節は一つのまとまりになるので、関係代名詞が出てきたらその前で切る。

この場合は関係代名詞whichの前にby という前置詞がついていますが、前置詞+関係代名詞というのもよく出てくるパターンなので、by which から関係代名詞節が始まるんです。

で、先行詞、すなわちby which 以下の関係代名詞節が修飾しているものは、当然、直前にあるthe mechanism です。

mechanism the がついてますから、どんなメカニズムでもいいわけではなくって、何らかの特定のメカニズムですよね。


じゃあどういうメカニズムなんだと、そこまで読んだ人はみんな、思うわけじゃないですか。

それがby which いかに説明されているわけですよ。

で、そのメカニズムというのは、by which citizens can communicate information
「それによって市民が情報を伝達できる」メカニズムなんだと。


ここで先行詞 the mechanism と関係代名詞節 by which citizens can communicate information との関係を見ておきます。

結論から言うと、
citizens can communicate information by the mechanism なんですね。

「市民はそのメカニズムによって情報を伝達することができる。」

で、the mechanism が前に出てきて、それをby which citizens can communicate information が修飾すると、「市民がそれによって情報伝達できるようなメカニズム」となるわけです。

これが先行詞と関係代名詞節との関係。


by which by by the mechanism byなんです。

the mechanism which citizens can communicate information by と、by をそのままもとの位置に置いておいてもいいのですが、関係代名詞の前に持ってくることがよくあります。

ここでもそう。


で、ここまで見ておくと、

Political participation provides the mechanism by which citizens can communicate information

訳:政治参加はそれによって市民が情報伝達できるような仕組みを与えてくれる。


文脈の中での単語の意味の把握

この辺まで読んでくるとどうも、第一文の participation とか第二文の their activity, この第三文の political participationなど、全て選挙における有権者の投票行動のことを指しているんだなということが分かってくるよね。

最初からそんなことわかっていたよという知性豊かな読者もけっこういるかとも思いますけど、ここまで読んでくるともうそれは明らか。

だから、「政治参加」とか「彼らの活動」とか直訳するより「選挙での投票」とか「投票行動」と訳したほうがいいと思います。


もちろん、political participation で「政治参加」って訳しても間違いではないんですよ。

でもそれが選挙における投票行動を指すとは、政治学とか専門に勉強している人や、実際の政治に何らかの関与をしている人でなければわかりにくいよね。

我々の多くのように、実際の政治にあまり関心がないとか、政治学なんてきちんと勉強したことがないとか、そういう人が大多数だと思うんだけど、そういう「普通の人」が「政治参加」っていう言葉を聞いてどんなことをイメージするか?

どうですか、みなさん?

あなたは「政治参可」してますか?

って聞かれると、「いや、特にはしてないけど」とか答えちゃうよね。


「政治参加」なんて言葉を聞くと、ほとんどの人は「政治家に立候補すること」とか「特定の候補者の支援活動をすること」とか、場合によっては「デモに参加すること」とか、こんな感じのことをイメージすると思うんですよ。

だから、「君、政治参加してる?」なんて聞かれると「いや、別に」となってしまう。


でも、ここで言ってるpolitical participation はそういったことではないんです。

選挙に行って投票すること、あるいは場合によってはあえて選挙に行かないこと、棄権することもpolitical participation なんですよ。

選挙に行って特定の候補者に投票するということは、その候補者の政策を支持するということですね。

特定の政策に対する支持を表明することで微々たるものではあるけれども、政治的影響力を行使する。

あるいは、あえて選挙に行かないということで、投票率を下げるということに貢献する。

これは、「お前らの言ってる政策は右から左まで全部ダメ、反対」っていう意見を表明することになる。

まあ、結果的にですけどね。

例えば投票率が50%を割れたりすると、ある政党や候補者が勝ったとしても、実質的には支持されているとはいえないよね。

半分以上の人たちがその政党なり候補者なりの掲げる政策に魅力を感じていない、支持していないということだからね。


話を戻しますけど、democracy における political participation とは選挙に行って投票することなんですよ。

それがこの第三文あたりまで読むとはっきりわかる。

というか、わからなくてはいけない。


political participation を「政治参加」と訳して、それが具体的に何を指すのかあいまいなまま理解した気になっていると、本当に英文を理解したことにはならないんですね。

だって、特定の政治家に対する政治献金や選挙応援なんかをイメージして読んでいると、だいぶずれた理解になってしまうよね。


英文を読む際には、一つひとつの単語が具体的にどういうことを指しているのか、考えながら読むということが非常に重要なんです。


例えばここで、「政治学の知識なんて全くないし、政治に対する関心もほとんどない」という人が、どうやってpolitical participation を「選挙に行って投票すること」と正確に理解することができるのか。

この後ろの部分を読むと、about their interests, goals, and needs, とあります。

直訳すると、「彼らの利害関心や目標、要求」です。

この部分は直前の information にかかりますから、

the mechanism by which citizens can communicate information about their interests, goals, and needs, 
で、「市民が自分たちの利害関心や目標、要求に関する情報を伝える仕組み」といった意味になります。


我々一般国民は、自分たちの利害関心や目標、要求に関する情報をどうやって政治家に伝えるか?

選挙を通じた投票行動によってですね。

もちろんデモとかネットへの書き込みとか、他にも方法はあると思いますが、一番はやはり投票行動ですよね。

で、これが Political participation なんですから、やはりここでの Political participation は「政治参加」ではなく、「選挙における投票行動」と訳したほうがよい。


このように、文脈に即して単語を訳すということが、非常に重要です。

これは和訳問題に限らず、客観形式の入試問題であっても、自分が英文を読んで正しく理解するためには絶対に必要なことなのです。



第三文、

Political participation provides the mechanism by which citizens can communicate information about their interests, goals, and needs, and create pressure to respond.

訳は、

「選挙を通じた投票行動は、それによって国民が自分たちの利害関心や目標、要求についての情報を政治家達に伝え、また、それにこたえるように政治家達に圧力をかける仕組みである。」

どうですか。

意味がはっきりわかりますよね。

これが文脈を意識して単語の意味を理解した訳なんです。


もしこれを、文脈や話の流れを考慮せずに機械的に直訳するとどうでしょうか。

「政治参加は市民が彼らの利害関心や目標、欲求に関する情報を伝え、答えるための圧力を作り出す仕組みである」

何言ってるのか、よくわからないでしょう。

岩波文庫みたいだよね。


残念ながら、市販の問題集や参考書の解答には、こんなレベルの意味不明な訳が載っていることが多いのです。

多くの塾や予備校の授業でも、この程度の訳でよしとしているんです。

訳している本人もその意味を正確に把握できていないからなんですよ。

しかし、とりあえず英語の構文や文法に関しては間違っているわけではない。


たとえ自分が受験する大学で和訳の問題が出ないとしても、こんな読み方をしている限りは英文の内容がきちんと理解できないんですよ。

だからこそ、英文を正確に理解できるようになるためには、まずは正確な和訳ができるようにならなくてはいけない。


このような作業をせずに、「英語を英語で理解する」なんて言っていると、いくら英文を読んでもその内容がぼんやりとしか理解できないんです。

「英語を英語で正確に理解する」ためには、その前の段階として、まずはきちんと日本語に訳せるようにならなくてはならない。


脱線しましたが、最後に例題1の全訳を書いておきましょう。


例題1

Democracy is unthinkable without the ability of citizens to participate freely in the governing process. Through their activity citizens in a democracy seek to control who will hold public office and to influence what the government does. Political participation provides the mechanism by which citizens can communicate information about their interests, goals, and needs, and create pressure to respond.
(東大、2006)

民主主義は、国民が政治に自由に参加することができなければ成り立たない。

投票行動を通じて、民主主義体制下の国民は、誰が政権の座につくのかをコントロールしようとし、政府がやることに対して影響力を行使しようとする。


選挙を通じた投票行動は、それによって国民が自分たちの利害関心や目的、要求を政治家たちに伝えるための仕組みであり、また、政治家たちにそれらに答えるように圧力をかけるための仕組みである。











2018年7月9日月曜日

大学受験英語読解講義②

大学受験英語の読み方2


例題1

Democracy is unthinkable without the ability of citizens to participate freely in the governing process. Through their activity citizens in a democracy seek to control who will hold public office and to influence what the government does. Political participation provides the mechanism by which citizens can communicate information about their interests, goals, and needs, and create pressure to respond.
(東大、2006)


前回は例題の第一文について説明しましたので、今回は第二文から。

Through their activity citizens in a democracy seek to control who will hold public office and to influence what the government does.

ちょっと難しい構造の文ですけど、わたしならこんな風に切りますね。

Through their activity citizens in a democracy seek to control who will hold public office and to influence what the government does.

わかりやすいように短めに切りましたけど、ある程度英語が読める人なら、

Through their activity citizens in a democracy seek to control who will hold public office and to influence what the government does.

ぐらいに長めに切ってもいいと思います。


まず最初のThrough their activity ですが、「彼らの活動を通じて」という意味ですね。

で、なぜここで切るかというと、through は前置詞ですが、前置詞は後に名詞をとって、前置詞+名詞でひとつのまとまりになる。

ここではactivity が名詞ですから、Through their activity で前置詞+名詞のひとつまとまりになるんです。

だからそこで一度切る。


すると次の部分。

citizens in a democracy seek to control

ここまで読むと、seek to control がVですね。

ですから、その前のcitizens in a democracy がそれに対するSになるんです。

したがって、citizens in a democracy seek to control でS+V、「民主主義における市民はコントロールしようとする」と、とりあえずは訳しておきましょう。


そうすると、ここまでのところは、

Through their activity citizens in a democracy seek to control

訳:彼らの活動を通じて、民主主義における市民はコントロールしようとする

とりあえずはこんなところですね。


代名詞が何を指しているのか、意識して読む

で、彼ら、their って誰のことを言っているのか?

まあ、普通に考えるとここでは市民、citizens のことですよね。

でも、普段私が塾で授業をしていると、こういうところでつまずく人がけっこう多いんですよ。

英文を読みこなすコツってたくさんあるんですけど、その中でも、代名詞が指しているものを正確に読み取ることはとても重要なんです。

これができないと、英文を読んでも内容が頭に入ってこない、何を言ってるのかわからない、ということになる。

で、普通は代名詞は、それよりも前に出てきた名詞を受けることが多いんですね。

例えば、

Tom has been in Japan for three years. He speaks Japanese very well.

これなんかめちゃくちゃわかりやすいよね。

二分目のHe は当然、前の分で出てきたTom のことですね。

こういうのが普通。

しかし、先ほどの例文、

Through their activity citizens in a democracy seek to control

のように、代名詞が指しているものが、それよりも後ろに書いている場合がある。

ここではtheir という代名詞が指しているのは、それより後に出てくるcitizens なんです。

こういう場合もよくあるので、代名詞が出てきた場合にはそれが何を指しているのか、意味を考えながら読んでいかなくてはいけない。

まあ、慣れてくれば考えなくてもわかるんですけどね。

とにかくたくさん英文を読んで、英文に慣れるということが重要。


疑問詞節

で、次に行きますが、

who will hold public office

これは疑問詞who から始まる疑問詞節です。

who + V で「誰がVするか(ということ)」というふうに訳します。

ですから、ここでは「誰が公職に就くか(ということ)」ぐらいでいいでしょう。


この疑問詞節ですが、名詞節といわれているものの一種で、名詞と同じようにSOCとして使える。

ここではwho will hold public office というまとまり全体が直前の動詞control の目的語、Oなんですね。

だから、control who will hold public office

で、「誰が公職に就くか(ということ)をコントロールする」となります。


疑問詞節は他にもたくさんありますから、主なものとその訳し方をまとめておきますね。

What + V :何がVするか(ということ)

What + S + V:何をSがVするか(ということ)

Who + V:誰がVするか(ということ)

Who + S + V:誰をSがVするか(ということ)

When + S + V:いつSがVするか(ということ)

Where + S + V:どこで(に、へ)SがVするか(ということ)

Which + V:どちらが(どれが)Vするか(ということ)

Which + S + V:どちらを(どれを)SがVするか(ということ)

How + S+ V:どのようにSがVするか(ということ)


Why + S + V:なぜSがVするか(ということ)

Whose名詞 + S + V:誰の~をSがVするか(ということ)

What time + S + V : 何時にSがVするか(ということ)

Whether + S + V (or not): SがVするかどうか(ということ)


例えば、I don’t know why he was absent for school yesterday.

訳:彼が昨日なぜ学校を欠席したのか、私はわからない。

why he was absent for school yesterday が全体でひとつのまとまりとして、動詞know に対する目的語(O)となっています。


Whether he will come or not is uncertain.

訳:彼が来るかどうかはわからない。

この文ではやはり、Whether he will come or not が全体でひとつのまとまりとして、後ろのbe動詞 is に対する主語(S)となっています。


他にもまだまだありますが、だいたいどんなふうに訳すのか、疑問詞節の意味がわかったと思います。


もとの例文に戻って、

Through their activity citizens in a democracy seek to control who will hold public office

訳:民主主義において市民は、彼らの活動を通じ、誰が公職に就くのかをコントロールしようとする

と、こうなりますね。

で、続き、and to influence の部分です。


等位接続詞 and

and は接続詞、より詳しく言うと等位接続詞というものなんですね。

別にこんな言葉は覚えなくてもいいんですけど、要するに何かと何かを対等なものとしてつなぐということなんです。

どういうことか?

A and B という形が出てきたら、意味はもちろん「AとB」でいいのですが、AとBが互いに対等なものであるということなんです。

逆に言うと、AとBを対等なものとしてつなぐ場合にA and B という形になるんですね。


こんな説明してもわかりにくいと思いますので、例文に則して説明しますね。

and to influence

and の後ろに to influence という不定詞(to + 原型)が来ていることに注意してほしいんですよ。

先ほど言ったように、A and B ABを対等なものとしてつなぐわけですから、and の後ろにto+ 原型が来ているということは、その前のto + 原型とつないでいるということなんです。

で、and の前にto + 原型があるかというと、ありますよね。

seek to control の部分、to control がある。

ということでこのto influence は前のto control と対等なものとしてつながれているわけです。

ということは、seek to control seek to influence なんですね。

で、これをand でつないでseek to control and to influence となるわけです。


少し前のところで、「名詞や動詞は前置詞とセットで覚える」と言いましたけど、ここでもseek という動詞は「seek to 原型」という形で、「~しようとする、~しようと努力する」と覚えておけばよいでしょう。

seek という動詞単独で覚えててもダメなんですね。


で、なにをしようとするのか。

seek to influence で「影響を与えようとする」です。

では、何に、あるいは誰に影響を与えようとするのか?

はい、この後ろに書いてある、

what the government does.

この部分がinfluence の目的語。

ここは What + S + V の形なので、先に4で述べた疑問詞節かなと思われる方も多いかもしれません。

だから、「政府が何をするか」と訳したくなりますよね。

でも実はこれ、そうじゃないんです。

まあ、そのように解釈してもいいんですけど、ここでは関係詞節ととるほうが自然。


関係詞のwhat 節

形は先ほどの疑問詞節と同じですが意味が少し違う。

What + V:Vするもの・こと
What + S + V:SがVするもの・こと

例えば I didn’t understand what I saw in the wood.

これを関係詞節として訳すと、
「私は森の中で見たものを理解することができなかった。」となる。

一方、疑問詞節として訳すと、「私は森の中で何を見たのか、理解できなかった。」


まあ、どちらでもそんなに大差ないように思えるけど、どちらかというと前者のほうが自然でしょう。

これが関係詞節のwhat節と疑問詞節のwhat節の違いです。


例文に戻って、what the government does を関係詞節として訳すと、「政府がすること・やること」、疑問詞節だと「政府が何をするか」となりますね。

で、influence what the government does. だと、「政府がすることに影響を与える」か「政府が何をするかに影響を与える」か?

どちらが自然かというと、やはり前者でしょうね。

だからここは関係詞のwhat節ととっておきましょう。


ここで重要なことは、このいずれが正解かということではなく、両方あるということを覚えておいてほしいんですよ。

関係詞のwhat節と疑問詞のwhat節。

で、それぞれ文脈に応じて、どちらも訳せるようにしておくこと。

特に関係詞のwhat節のほうが英文に出てくる頻度が高いように思います。


これで第二文が全て訳せますね。

Through their activity citizens in a democracy seek to control who will hold public office and to influence what the government does.

訳:民主主義における市民は、彼らの活動を通じて、誰が公職に就くのかをコントロールしようとし、また、政府のすることに影響を及ぼそうとする。


もう少しなめらかな訳だと、

訳:民主主義社会において人々は、自らの政治的活動によって、誰が選挙に通るのかをコントロールしようとする。と同時に、政府のすることにも影響力を行使しようとする。

となります。

(次回に続く)