2020年12月8日火曜日

小論文の書き方⑬:どこかで読んだ話をベースに論を進める?

小論文を書く場合、いわゆる「ネタ」は多ければ多いほどいいのです。

そもそも、あるテーマに関して我々凡人が思いつく程度の議論は、ほとんど例外なく、過去の偉人がすでに書物や論文という形で徹底的かつ詳細に議論し尽くしていると考えて差支えないでしょう。

我々が「自分自身の考え」として何らかの主張をしたところで、それがまったくのオリジナルな議論であるといったことはほとんどない。

ですから、普段から様々な書物を読み、広範なテーマに関してネタを仕入れていく、で、課題文で与えられたテーマに関して、その中から使えそうなネタを探すということは決して悪いことではありません。

むしろ、どんなテーマが与えられても、それについて3つも4つも異なるストーリーで論文が書けるほど、頭の中にストックをため込んでいるということが、論文を書くうえでは非常に役立ちます。

それくらいの知識があれば、はっきり言ってもう論文の勉強なんてしなくていい。

 少なくとも大学入試の試験対策としては。


 だから、どこかで読んだ話をベースに自分の論文を書くことは、入試や就職試験の小論文では反則でもルール違反でもありません。

しろ、普段から読書を通じて、それができるくらいの知識のストックを準備しておくとよいでしょう。

読書量は小論文を書くうえで最も重要なファクターですので、書けるようになりたければ普段からガンガン読んでいってください。

「バカになるほど本を読め」というタイトルの本がありましたけど、まさに名言だと思います。

書痴なんて言葉もありますが、とにかく普段からどんどん読むこと。

少しでも興味を持ったテーマやおもしろそうな話題があったら、それに関する本をアマゾンなんかでまとめ買いする。

で、端から読んでいって、どんどん知識を吸収していく。


 もちろん、大学の卒業論文や修士論文・博士論文など、学術的な論文ではオリジナリティが求められます。

そういった場合には書物で読んだ議論の受け売りはご法度であり、引用した場合にはきちんとその出典を明らかにする必要があります。

しかしながら、就職試験や大学入試の論文ではそこまで厳しくオリジナリティを問われることはありません。

受験生の皆さんのほとんどは、なにも学者や作家を目指しているわけではないからです。

ですから受験生の皆さんは、貪欲にネタを仕入れ、試験ではそれを安心して使えば良いと思います。


 受け売りでいいんですよ。

むしろ、どんなテーマがきても、他人の議論の受け売りで語れるぐらいの読書量がある、知識があるということは素晴らしいじゃないですか。

実際には読書量が少なすぎて受け売りすらできない人がほとんどであり、そのほうが問題だと思います。

とにかくまともな本を読まなくなってきている。

SNSとかゲームとか、くだらない暇つぶししかできない、活字を読めない大人が急速に増えてきている。

数十年前と比べると、日本人の知的レベルって驚くほど下がってきていると実感します。

皆さんは受け売りできるぐらい本を読んで知識をつけてください。


 ただし、テレビやラジオで聞いた話、コメンテーターの話を引用したり、そのまま書くのは注意が必要です。

彼らのコメントの多くはただの感想や主観的印象であることがほとんどであり、ぜんぜん論理的ではない。

事実に基づいていない、あるいは事実に反することが多いのです。

論文はあくまで論理で書くものであり、感情論を書いてもただの感想文にしかなりません。

したがって、テレビに出てくる評論家やコメンテーターが面白おかしく話す内容をそのまま論文の試験で書いても、評価は低いものとなってしまいます。

彼らは視聴者の感情に訴えかけることには長けているため、一見もっともらしいことを言っているように聞こえます。

ですが、少し立ち止まって考えてみると、彼らがいかにいい加減なことをその場の思いつきで発言しているのか、その論理性のなさ、なんら事実や証拠に基づかない感情的意見を述べているか、簡単にわかるはずです。

そのようなことは論文では書いてはいけない。


 マスコミや世間の論調というのはたいてい、「そうであってほしい」、「そうであってくれないと困る」という多くの人々の願望に過ぎないものが多い

当たり前だけど、そこに論理や証拠なんかない。

だから、こういうことをそのまま論文に書いてはダメなんですよ。

むしろ、世論を常に疑うという態度こそ、論文を書くために必要なセンスといえるでしょう。

まずは多数派意見を疑ってみること、そのうえで、なぜ多くの人々がそのように考えるのか、その理由について考えてみること。

これ、小論文を書けるようになるための訓練としてけっこう役に立つと思いますので、普段から意識しておくとよいでしょう。

小論文の書き方⑫:新聞記事など、主張があいまいな課題文

小論文の試験では様々な種類の課題文が出題されますが、その中でもよく出されるものとして新聞記事があります。

新聞記事から抜粋した課題文の場合、あるテーマについて、賛成論と反対論の両方が書いてあって、最後に「・・・はこれからの日本を左右する重要な問題である。国民の間での真剣な議論が必要であろう。」みたいな感じで終わるものが多いですよね。

その記事を書いた人自身の主張はどっちなのか、賛成か反対か、はっきりとは書かない。

様々な人にインタビューして拾ってきた発言の一部を列挙し、賛成論と反対論を自分の意見としてではなく、そういった人々の言葉として紹介していく。

で、最後の最後でも自分の意見は言わずに、「われわれ国民みんなが真剣に議論すべきだ」なんて言って、お茶を濁す。


こういった課題文について小論文を書く場合も、最初に述べた通り、皆さんは自分の主張や意見をはっきりと述べなくてはならない。

その問題について賛成か反対か、立場を明確にする必要があります。

課題文の新聞記事に引っ張られて、「難しい問題だ」とか「われわれ一人ひとりがもう一度、真剣に考えるべきだ」なんて曖昧なことを書いてはいけないのです。

それは新聞記事だけで十分。

試験で小論文を書かせるということは、みなさん自身の意見を聞きたいわけですよ、出題する側としては。

だから、そのような出題者の要望にきちんと答えなくてはいけない。


これは何も小論文に限ったことではないのですが、色々な試験、特に記述式の試験では、出題者の意図を正確に読み取り、それにきちんと答える形で解答を作成するというのが鉄則です。

出題者はその問題を通して何を聞きたがっているのか、どういう知識を要求しているのか、何を書かせたがっているのか...。

これをきちんと読みとって、出題者が満足するような解答をする必要があります。


小論文を試験として課すということは、出題したテーマについてあなたがどのような意見を持っているのか、それをいかに論理的にわかりやすく説明できるのか、こういった能力を見たいわけですよ。

だから主張と論拠を必ず書かなくてはいけない。

これらを明示しない新聞記事などが課題文として出題された場合でも、この原則は必ず押さえるようにしてください。