2019年2月19日火曜日

小論文の書き方⑪:様々な課題文の読み方と扱い方3

(前回の続き)

3.その他

(1)複数の課題文が提示され、それぞれを読み比べたり比較したりするもの

一部の大学入試問題などでは、複数の資料や課題文を読ませ、それらについて比較検討させるもの、それらの中からいくつかピックアップして論じさせるものなど、課題を読むだけでもかなりの時間がかかるものがあります。

これらを解くうえで重要なことは、

1.読むスピード

2.それぞれの資料や課題文の要点を把握すること

3.それぞれの資料や課題文の相互の関連性や類似、相違などを読みとること

3点です。

そのためには何よりも正確な読解力と読解スピードが必要になります。


例えば、このような問題の典型として慶應義塾大学SFCの入試問題が挙げられます。

毎年、大量の資料を読ませたうえで、それらを参考にしながら政策や新製品の開発プラン、大学での新たな授業の構想など、オリジナルなアイデアを考えさせ、それを図なども交えながら説明させるという形で出題されています。

年度にもよりますが、これらの大量の資料をすべて熟読していたのでは到底時間内に間に合いません。

資料をある程度は流し読みしながら速読し、それぞれの資料の要点をつかむ。

そのうえで各資料の相互の関連性を把握し、自分が書く論文にはどの資料が特に重要か、あるいは逆にどの資料はさほど重要ではないのかなど、短時間で読み取り、分析する力が必要です。

上に述べた三点を、普段の勉強においても意識して取り組むことで身につける必要があります。


(2)グラフや図表など資料の読みとり

グラフや図表などの資料を提示し、その読み取りおよび解釈を要求する問題もよく出題されます。

例えば、「次の資料から読み取れることを400字程度でまとめ、どのような問題が生じているか、またそれに対する解決策は何か、400字程度であなたの意見を述べなさい」というような問題です。

資料の読みとりの問題ではまず、グラフや表から読み取れる事実のみを書かなくてはいけません。


普段、生徒さんの論文を見ていると、その多くが最初から結論ありきで、ステレオタイプな意見や解釈を書いてしまうケースが非常に多いのです。

資料として与えられたグラフや表からは必ずしもそのような意見や解釈は出てこない。

場合によってはむしろ逆の主張や解釈を支持するような資料であったりする。

にもかかわらず、マスコミや世間でよく言われているような意見なり主張なりを最初から無条件で正しいものとして論じ、それにフィットする部分だけをグラフや資料から恣意的に切り取って議論をすすめてしまう。

結果として、資料の解釈において「木を見て森を見ず」ということになってしまう。

即ち、グラフや表の細部にばかり目が行き、それらが表わしている大きなトレンドを見逃してしまうのです。


資料の読み取りの問題ではまず、先入観や固定観念は捨て、頭の中を白紙の状態にしてください。

そのうえで、表やグラフから読み取れる事実だけに着目しなければならない。

その際、どこに着目すればよいのか。

グラフや図表は情報量が多いので、そこに様々な事実が表れている。

したがってこれら全てに着目し、それを逐一言葉で説明していくと、文字数がいくらあっても足りなくなりますし、全体として何が言いたいのかよくわからないということになってしまう。

そうならないためには、資料から読み取れる事実に優先順位をつけ、順位の高い順にいくつかピックアップして書いていく必要があります。


では、優先順位はどのように決めればよいのか?

グラフでも図表でもそうですが、まずは一番大きなトレンドが優先順位の一番目に来ます。

次に大きなトレンドが二番目、その次が三番…というように、大きなところから順に見ていくとよいでしょう。

たいていの問題の場合、細部は無視してかまわない

むしろ、細部にばかりこだわって、大きなトレンドを見落としてしまう、ないしはそれについて触れていないといった間違いのほうが圧倒的に多いのです。

2019年2月15日金曜日

小論文の書き方⑩:様々な課題文の読み方と扱い方2

(前回からの続き)

2.長めの論説等が提示されている課題文

これはいわゆるオーソドックスな課題文型の論文です。

ある程度ボリュームのある文章を読ませ、それを踏まえて論文を書かせるというもので、小論文の試験のほとんどがこのパターンに当てはまります。

この手の問題も厳密に見ていくといくつかのタイプに分けることができます。

(1)課題文を読ませたうえで自由に論じさせるもの

まず第一のタイプとして、「次の課題文を読み、あなたの考えを述べなさい」というように、皆さんの考えを自由に論じさせるものがあります。

ここで注意すべきことは、「自由に述べなさい」と書かれているからといって、なんでも思ったことを自由に書けばよいということではないということです。

与えられた課題文にはほとんどの場合、中心となるテーマがあります。

このテーマをきちんと読みとり、これに関した問題設定をして意見を述べる必要があります。

場合によってはテーマが複数あることもありますが、そのような場合でもなるべく重要度の高いテーマ、中心的テーマを読みとり、それについてあなたがどう考えるのかを述べなくてはなりません。

課題文の中で少し触れられているだけのテーマや、例として挙げられているエピソードなどを取り上げ、それについていくら細かく論じても、あまり高い評価にはつながりません。

また、そもそも課題文で取り上げられていない事柄や、課題文の議論とずれたテーマについて論じるのも同様です。

「あなたの考えを述べなさい」と書かれているからといって、なんでも自由に書けばよいということではないのです。

「そんなこと当たり前じゃん!」と思われる読者も多いかと思いますが、普段論文を指導している中で、そういったずれた論文を書く生徒さんや、課題文で取り上げられているエピソード、具体例について長々と書いてしまう生徒さんがけっこう多いのです。

やはり、議論の本質は何か、課題文で展開されている論理の構造を把握することに留意しながら読むことが重要です。


(2)まず最初に課題文を要約させたうえで、意見を論じさせるもの

二番目のタイプとして、「課題文で述べられている筆者の意見を要約したうえで、あなたの考えを述べなさい」とか、「課題文の筆者の考えを要約し、それについてあなたは賛成か反対か、理由を明確にしつつ論じなさい」といったものがあります。

これは一見すると要約するのが面倒な気がしますが、要約することによって課題文で述べられている中心テーマが何なのか、明確にわかりますし、それに即した論文を書くことができるため、(1)に比べるとむしろ書きやすいともいえます。

前半の要約がきちんとできれば、そんなにずれた論文を書くことはないからです。

そのためにはもちろん、課題文を正確に読みとる読解力、およびそれを簡潔にまとめる記述力が必要となります。


(3)課題文を読ませたうえで、テーマを指定して書かせるもの

三つ目として、「次の課題文を読み、○○についてあなたの考えを述べなさい」とか、「課題文を踏まえて、○○についてあなたは賛成か反対か、理由を明確にしたうえで論じなさい」といったものがあります。

これもテーマがはっきりと設定されているぶん、(1)と比べると書きやすいと言えるでしょう。

繰り返しになりますが、指定されているテーマについて正面から論じる必要があります。

2019年2月12日火曜日

小論文の書き方⑨:様々な課題文の読み方と扱い方1

大学受験小論文の問題では、ほとんどの場合何らかの課題文が提示されます。

皆さんはその課題文にきちんとフィットした小論文を書かなくてはいけません。

そのためにはまず、課題文の内容をきちんと把握し、課題文が取り上げている本質的なテーマは何か、何について議論すべきなのか、正確に把握する必要があります。

ここでは様々な課題文の読み方について論じていきたいと思います。


1.一行しかない課題文

最もシンプルな課題文として一行から数行程度の課題が与えられる場合があります。

例を挙げてみてみましょう。

「うそも方便」ということわざについて、800字程度で論じてください。(杏林大学医学部2015年)

読書から得られるものについて述べよ。(防衛大学2015年)



このようなシンプルな課題の場合、書くべきことは限定されてきますので、何について書くべきか思い悩む必要はありません。

そういう意味では簡単であるともいえるのですが、逆に言うと、テーマから外れた論文やピントのずれた論文では、いくら書いても評価につながりません。

与えられたテーマについて何を書いたらよいのか分からない、書くべきことが思いつかないという理由で、課題から少しずれた論文を書く人がけっこういるのですが、そのようなことがないように留意すべきです。


例えば、例に挙げた防衛大の問題の場合、「効率的な読書法」とか「最近の人々の活字離れ」などといった話でいくら書いても評価にはつながりません。

たとえそれが論文としては面白いもの、優れたものであったとしても、あるいは文章として良く書けていたとしても、評価は低いものとなります。

「読書から得られるもの」というテーマからずれているからです。

自分がこれまでの読書経験を通じてどのようなことが身についたのか、どんな利点があったのか等について正面から論じなくてはいけません。

また、「読書なんてしても大して得られるものはない」とか「読書よりも経験や体験から学ぶほうが重要だ」など、課題そのものを真っ向から否定するような論文も避けたほうが無難でしょう。